2023.8.30
「大人の恋を描きたい」野原広子さんが語る、大好評の最新連載作『さいごの恋』に込めた思いとは?
休養を経ての待望の最新連載「さいごの恋」は、中年独身女性が主人公という、既刊とは異なる設定の新境地ともいえる作品です。
野原さんに新作に込めた思いを伺いました。
(聞き手・構成「よみタイ」編集部)
更年期を迎え体調を崩して老いを自覚
――『人生最大の失敗』『今朝もあの子の夢を見た』『赤い隣人』と、2023年度は刊行が続きました。相当ご多忙だったのでは。
昨年は、更年期障害の症状が強めに出てしまい、体調がなかなか落ち着かなかったのですが、私には珍しく新作の発売が続き、経験したこともないほどの慌ただしい一年でした。
実際に手を動かして漫画を描いていない時も、常に仕事のことを考えている状態で。
同時進行で複数の作品を進めてしまったことで、それぞれを掘り下げきれなかったのでは、まとまりきれないままなのだったのではと不安もありました。
――三作いずれにも、そのようなことはまったく感じませんが。
今読み返しても、「こんなセリフ、自分が書いていたっけ?」と、記憶が飛ぶほど当時は余裕がなかったのですが、二度とあのようなスケジュールでは仕事はしたくないですね(笑)。ただ、気持ちを切り替えてとにかく前に進むという意味においては、それはそれでいい勉強にはなったのかなと。
作品はそれぞれに何とか着地させられましたし、刊行ラッシュの後に休養しまして、お陰様で体調も戻りました。
――これまで、夫婦、家族やママ友の関係性など、子供を持つ女性を主に描いていらっしゃいましたが、今回の連載は、46歳の独身の女性高校教師が主人公という、これまでの野原さんの作品にはなかった人物設定です。テーマを思いついたきっかけを教えてください。
私が今は独身であること、ひとり暮らしを始めたことがきっかけとなりました。
結婚して出産、育児をして子供が独立した後に離婚してひとりになった今、同世代の独身の人の気持ちを想像することができるようになったというか。
さらに、更年期を迎え体調を崩して老いを自覚し、自身の老後を想像するようになったということも影響しています。