2021.11.19
逢坂剛×酒井順子“博報堂出身作家”対談 「自分をかわいがると、どんな仕事でも楽しみが見つかる」
自分がかわいいから、つまらない仕事でも楽しみを見つける
酒井 どうやって得意先の身になることができたんですか。
逢坂 身になるというほどじゃないけれど、何かしらは楽しみがあるわけ。下町の組合のPRでも、ショーのバックにナマのフラメンコ・ギターを入れたりとかね。そういうのは、単なる個人の趣味ではあるけれども、楽しみだった。私の場合、何でも楽しみを見つけようとすると見つかる、というか、見つけるのがうまいのかもしれない。
それができるのは、どう考えても自分がかわいいからですね。自分をかわいがるということは、どんなつまらない仕事でも、楽しみを見つけるということにつながる、と思うわけです。だって、嫌でもやらなくちゃいけない、という場合が出てくるわけでしょう、会社勤めしていればね。
酒井 私は、とにかく会議が苦手でした。
逢坂 私も会議になると、あまり発言した覚えがない。先輩に「君は一時間の会議で一度も発言しなかったね」なんて嫌みを言われたこともあります。
酒井 意外です。
逢坂 自分に、あまり興味のない会議だったのかもしれないな、概してそうなんだけど。そもそも、あまり会議やったという記憶が、ないんだよね。
酒井 私も会議であまり発言するタイプではなかったので、いつも眠くなっちゃって、太ももを安全ピンで刺して覚醒しようとしていました。
逢坂 血だらけになったりして(笑)
酒井 寝ないようにコーヒーをいっぱい飲んでたら、口に入れた瞬間に寝ちゃったこともありました。
逢坂 えっ!
酒井 それで全身が弛緩して、口からコーヒーがばーっと滝のように。
逢坂 こりゃ、だめだ(笑)
酒井 たまたま膝に置いていた資料の上に、コーヒーが落ちた音が響きまして。
逢坂 器用だねえ、しかし。そんなことできるのかね、飲みながら寝るって。
酒井 自分でもびっくりして一気に目が覚めました。みんなもどうしていいか分からなかったのかスルーしてくださって、何事もなかったかのように、会議は続いていました。