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学歴にこだわり続ける敗北者たちの声を書きたい【京大卒・佐川恭一×慶應卒・麻布競馬場 学歴対談】

佐川恭一待望の新刊『清朝時代にタイムスリップしたので科挙ガチってみた』(通称『科挙ガチ』)がついに発売!
刊行を記念して、『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』が大ヒット中の麻布競馬場との対談が実現しました。
学歴、就職偏差値、地方と都会……などなど縦横無尽に繰り広げられるトークをお楽しみください!
(構成/長瀬海)

固有名詞の溢れる小説

麻布 「小説すばる」(2022年9月号)に佐川さんが『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』の書評を寄せてくださっていて、めちゃくちゃ感激しました。僕、実は佐川さんの『サークルクラッシャー麻紀』がすごく好きで。

佐川 え、ほんとですか!? うわー嬉しい!

麻布 作家の大滝瓶太さんが前にnoteで、佐川さんのことを「黒い森見登美彦」って評してて、一人ですごい納得してました(笑)。

佐川 ありがとうございます(笑)。書評でも書きましたけど、麻布さんの小説の特徴は恐ろしいぐらい記号的な書き方をするところだと思います。そしてそこが僕と麻布さんの共通点でもあるのかな、と。麻布さんの方がより徹底されていますけれども。

麻布 佐川さんも固有名詞を躊躇なく使いますけど、使った後にすぐに注釈的に説明を入れますよね。それがボケのようになってて、なるほどそういう笑いの取り方があるのかって驚かされるし、何より読んでいて楽しい。

佐川 確かにそうなってるかもしれないですね。僕、ハイコンテクストな固有名詞を使うと、これ、わかってくれるかな……ってちょっと不安になっちゃうところがあって。その点、麻布さんはガンガン使う。ジェラピケとかはギリわかるけど、オーラリーやドリスとかになると僕はわからない(笑)。でも、読者がわからなくても、すっと流れていくからウザくないというか、逆に心地いいんですよ。たとえばテレビでマツコ・デラックスさんが東京の特定の場所について偏見をガーッと語ったりするの、あんまりわかってなくてもつい笑ってしまう。語りの力、言葉の力がそれだけ強いということなのかなと思うんですけど、麻布さんもある土地やアイテムのダサさだったり、逆にその良さだったりといった価値を言葉のなかに込められている感じがします。

麻布 それはもしかしたら、僕が固有名詞から発せられる自意識みたいなのを表現したくて小説を書いているからかもしれません。佐川さんはまたちょっとやりたいことが違いますよね。今回の『科挙ガチ』の表題作も佐川ワールド全開ですごい(笑)。

佐川 僕も記号的な書き方しますけど、僕自身、自分で何をやりたいのかわかっていなかったりします(笑)。何をやりたいか自分ではっきりさせすぎちゃうと、書いてて飽きるっていう面もあるんですけど。「科挙ガチ」も、編集者さんに提案され、送ってもらった参考書籍を読んで書き始めました。途中で担当さんが変わって、新しく引き継いだ編集者さんに「現代日本の高校生が異世界転生するのはどうですか?」って言われて、その方向で改稿することになって。ぶっちゃけ異世界転生モノを読んだことがなかったので、「どんな感じの話なんですか?」って聞いたら「まあ大体トラックに轢かれますね」って言われたんです。だから、その通りにしました(笑)。

麻布 科挙がテーマだから昔の中国っぽい話かなと思ったら、現代的な受験の要素盛りだくさんで楽しめました。目を閉じると流れる文章の滝のこととか、寺の柱に知識を刻みつける話なんかは勉強を極めた人間だけがたどり着ける世界観だと思う。

佐川 もちろん僕の経験もありますけど、そこらへんは担当の編集者さんがアイディアをくれたのが大きいですね。彼がいなかったら書けなかったところもたくさんあります。「すばる文学賞三次通過の女」はボツにされましたけどね。こんなの「小説すばる」に載せられないって(笑)。

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麻布競馬場

あざぶけいばじょう
1991年生まれ。慶応義塾大学卒業。
著書に『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』(集英社)、『令和元年の人生ゲーム』(文藝春秋)。

Twitter@63cities


(イラスト:岡村優太)

佐川恭一

さがわ・きょういち
滋賀県出身、京都大学文学部卒業。2012年『終わりなき不在』でデビュー。2019年『踊る阿呆』で第2回阿波しらさぎ文学賞受賞。著書に『無能男』『ダムヤーク』『舞踏会』『シン・サークルクラッシャー麻紀』『清朝時代にタイムスリップしたので科挙ガチってみた』など。
X(旧Twitter) @kyoichi_sagawa

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