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阿波高校(徳島)女子球児の最後の夏。「やっぱり野球が大好き。普通に女子高生しているより青春できていた」

ベンチに入れなくても一緒に戦った

7月19日、徳島県の独自大会の1回戦。阿波は強豪の生光学園と対戦した。試合中、今村は補助員の吉本を見ていた。

「本当は、補助員は声を出してもダメなんです。甲子園では絶対無理だと思いますけど、けっこう、感情を出しながら見ていましたね。チャンスのときに飛び跳ねたり(笑)。もちろんファウルボールとかをちゃんと拾いながら」

吉本は背番号がなくても、ベンチの脇で、チームの一員として最後の夏を戦ったのだ。阿波はチャンスをつくりながら得点できず、強豪のプレッシャーを受け、大量点を奪われてしまう。0対7でコールド負け。最後の夏が終わった。

試合後のラストミーティング。鳴川監督から吉本に、背番号4が縫いつけられたユニフォームが手渡された。
 
監督 昨日の晩、縫ってきました。どう?
吉本 カッコいいです。
監督 初めて背番号を縫った。お母さんの気持ちがよくわかった。野球部に入ってきたとき、「監督と一緒で、背番号なしで戦わんか」って言うたんやけど、3年間、よく戦いました。試合に勝って「勝利の女神だ」って言って渡したかったんだけど、それは申し訳ない。本当にチームを引っ張ってくれてよく頑張ったので、受け取ってください。
 
最後に吉本が言った。

「やっぱり野球が大好きです。普通に女子高生しているより、全然、青春できていたと思うんで、むっちゃ楽しかったし、つらくなったときは背番号を原動力にして頑張りたい」

甲子園史に残る2020年。球児たちの想いを追った『消えた甲子園 2020高校野球 僕らの夏』

『消えた甲子園 2020高校野球 僕らの夏』は、今回の阿波高校のストーリーのほかにもたくさんの感動エピソードが満載。

【第1章】ヒロド歩美が見た 2020年の高校野球
【第2章】球児を奮い立たせた家族の力
【第3章】甲子園が消えた夏に求めた 「心の中の甲子園」
【第4章】球児を支えた仲間の絆
【第5章】白血病から復活へ
【第6章】球児を育てた地域の力
【第7章】それぞれの「最後の夏」
【第8章】甲子園交流試合 熱戦譜

以上の全8章で構成されています。

『消えた甲子園 2020高校野球 僕らの夏』の詳細はこちらから

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