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阿波高校(徳島)女子球児の最後の夏。「やっぱり野球が大好き。普通に女子高生しているより青春できていた」

女子が野球をやって「ほんまに大丈夫?」  

高校時代に野球部に所属していた今村は、自身がプレーしていた20年以上前のイメージがぬぐえなかった。

「僕たちの時代に女子が硬式野球をするというのはまったく考えられなくて、その後、いろいろなところでやっている女子が増えましたけど、『ほんまに大丈夫?』という気持ちが残っていました。本人にも部員にも何度も聞きました」

今村の固定観念は、吉本やほかの部員と接するにつれて覆されることになる。

「でも、彼女も部員も『男女に関係なく、ひとりの選手として』と答えていましたね。ルール上、公式戦に出ることはできないけど、野球部員として誰もが認める存在でした。『普通にケンカしますよ』と言うし、誰よりも野球が大好きだし、女子であることにこだわってるのは僕だけなんかなと思いました」

事実、他校との練習試合にも出場している。

「僕が見た試合では、相手の監督に了解を取って、6回からセカンドで出ていました。守備では強い当たりを逃げることもないし、バッティングではちゃんと前にはじき返していました」

女子選手を預かる監督はどう思っていたのか? 鳴川真一監督は言う。

「彼女は、チームの中ではひたむきさで引っ張るリーダー的存在です。どの練習も手を抜くことがないですし、目一杯やりますし。りりかが一生懸命ひたむきにやっているのを見て、男子の選手もまた頑張っています」

入部にあたって、指導者として戸惑いはなかったのか?

「中学時代に彼女のプレーを見ていたんですが、硬式野球のスピードについてこられるのか、男子にまざってやれるのかは疑問でした。私の先輩の娘さんということもあって、どうしていいのかわからないというのが正直なところでした。彼女にどんな環境を提供できるのか。どんな高校野球をやらせてあげられるのだろうか、と」

バスケットボール部をやめて野球部に入ってきたときの吉本の表情が、鳴川には忘れられない。

「『野球をやりたいです』と言いに来たとき、『本気なんや』というのがわかる表情をしていました。だから、私は部員の前で『あなたの高校野球を全力でサポートするよ』と言いました」

体力面で男子に劣る部分があるかもしれないが、練習でも手加減しない。

「りりかが『全部やります』と言うので、まったく同じ量の練習をさせました。練習試合に出しても大丈夫だなと自信を持って思えたのは三年生になって、部活動が再開してから。お父さんと自主練習をやって、スローイングもスムーズになりました。本当に一生懸命に努力したのがわかる休校明けの練習でした」

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