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宮城リョータに河田美紀男に福田吉兆? 能代工バスケ部「9冠世代」の『スラムダンク』推しキャラは誰だ?

若月徹は「もっとホメてくれ」な個性的なキャラが推し

田臥選手と菊地さんと1年生から「黄金トリオ」として能代工9冠を支えた若月徹さん。
田臥選手と菊地さんと1年生から「黄金トリオ」として能代工9冠を支えた若月徹さん。

 田臥と菊地が湘北高校のキャラクターを挙げたなか、彼らと1年生から「黄金トリオ」として能代工を支えた若月徹の推しは渋い。

「自分は福田です」

 湘北高校のライバルである陵南の福田吉兆は、若月と同じパワーフォワードである。得点能力に優れ、がむしゃらなプレースタイルが身上と通ずる部分が多い。
 そのなかでも若月がシンパシーを感じているのが、福田の人間臭さだ。

「湘北との試合中に、福田が『もっとホメてくれ』って心で言ってる場面があるんですけど、自分もそうで。主人公の花道よりマッチアップした福田に感情移入していました」

 若月は能代工時代に「怒られ役」だった。
 練習、試合問わず、監督の加藤三彦から時に怒声を浴びせられながらもコートで食らいつき、地道にスキルを伸ばした選手だった。

田臥たちの1学年下のキャプテン、堀里也も福田吉兆を選んだ

9冠後のキャプテン堀里也さん。無冠に終わった1999年当時と、堀さんのその後の物語は「9冠無敗」の重要なテーマとなった。
9冠後のキャプテン堀里也さん。無冠に終わった1999年当時と、堀さんのその後の物語は「9冠無敗」の重要なテーマとなった。

 こういった観点から述べると、若月たちの1学年下でキャプテンを担った堀里也も福田に好意的だったことが納得できる。
 ガードの堀は、中学まではボールを持ったらシュートを決めるまで攻め切る――『スラムダンク』なら、湘北高校の流川楓や山王工業の沢北栄治のようなプレーヤーだった。
 エゴイズムの塊のような堀が、能代工に入り監督の加藤から洗礼を受け、コンビを組む田臥ともなかなか呼吸が合わずに「俺はこんなもんじゃない!」ともがいていた日々は、まさに福田のような歩みでもあった。

「『もっと認められたい!』という想いが強かったですね。ポジションは違いましたけど、マインド的には福田だったかなって思います」

 現実の世界で高校バスケ界の頂点に君臨し続けた男たちですら夢中になった『スラムダンク』のキャラクターは、息づいていた。競技者をも唸らせる異次元のスキルという光より、それぞれの歩みには泥臭さや陰が際立つ。そんな彼らに自己を投影し、そして自然と思う。
 俺も、あんな風になりたい。
『スラムダンク』の息吹は世代を超える。あのプレー、あの試合、あの言葉。不朽の名作は、その時々で色彩を変え、人々の心を揺さぶる。

(本文敬称略)

『9冠無敗』では20名以上の関係者を取材。知られざる証言も満載。
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田臥勇太とともに9冠を支えた菊地勇樹、若月徹ら能代工メンバーはもちろん、当時の監督である加藤三彦、現能代科技監督の小松元、能代工OBの長谷川暢(現・秋田ノーザンハピネッツ)ら能代工関係者、また、当時監督や選手として能代工と対戦した、安里幸男、渡邉拓馬など総勢30名以上を徹底取材!
最強チームの強さの秘密、常勝ゆえのプレッシャー、無冠に終わった世代の監督と選手の軋轢、時代の波に翻弄されるバスケ部、そして卒業後の選手たち……秋田県北部にある「バスケの街」の高校生が巻き起こした奇跡の理由と、25年後の今に迫る感動のスポーツ・ノンフィクション。

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田口元義

たぐち・げんき●1977年、福島県生まれ。元高校球児(3年間補欠)。雑誌編集者を経て2003年からフリーライターとして活動する。
著書に「負けてみろ。聖光学院と斎藤智也の高校野球」(秀和システム)などがある。

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