2020.12.19
『ギャル即是空』~「色即是空」とは何か? 平成生まれの僧侶が「ギャル」で説明してみた〜
『ギャル即是空』
「色即是空」とは、『般若心経』に出てくる仏教用語で、「形あるものは何もない」ということを説明している。
今回は「色即是空」のニュアンスを伝えるため、一つの物語をご用意した。
それが「ギャル」の存在のありかを考えるショートストーリー『ギャル即是空』である。
第1章 ギャルは無常に
SHIBUYA109前。目の前には「ギャル」がいた。
黄金色に輝く巻き髪。カラコン、ネイルに、しっかり引いたアイライン。幼稚園児が描いた太陽のようなつけまつげ。手には、BACKSのショップ袋を携えている。
そして、今、目の前を通り過ぎようとしている瞬間、鼻を刺すドルガバの香水の匂い。
間違いない。ギャルだ。
推測は確信に変わり、僕はギャルに背後から声をかける。
「ねぇ、そこのギャル〜! 今から一緒にお茶しない?」
ギャルは僕の声に反応して振り返り、こう言った。
「ウチは『ギャル』と世間では呼ばれてるけど、それはあくまで呼称・記号・通念であって、それに対応する実体はマジ存在しなくなくなくない?」
第2章 メンディーなギャル
耳を疑った。
SHIBUYA109前でギャルをナンパし続けて、早5年。
「キモい」「ウザい」と断られることは、当たり前。
「ウチは『ギャル』と世間では呼ばれてるけど、それはあくまで呼称・記号・通念であって、それに対応する実体はマジ存在しなくなくなくない?」
初めて提示されたカオスなリアクション。
新種のナンパ防止策なのか?
つまりは「ギャルに対応する実体は存在しない」と言いたいのだろうか。
「何を言っているんだこいつ」そんな思いが脳内を占有したが、ナンパ師としての動物的本能だけで会話を続けていた。
「何言ってんの、オネエさんはギャルじゃん〜! 俺そういう哲学?みたいな話好きなタイプだからさ、今からそこのカフェで話さない?」
ギャルは眉一つ動かさず答える。
「『ギャル』ってゆう名称はあるけど、『ギャル』ってゆう実体はなくない? お兄さんが言う『そこのギャル』って何指してるの? マジやばたにえんの無理茶漬けなんだけど」
面倒くさいギャルだった。
最近、哲学の本でも読んでいるのだろうか。「実体」とか日常会話で使わないだろ、普通。
なんにせよ、少しおかしくなってきて、会話を続けていた。