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日本人初参加! 豪大陸521キロのアドベンチャーマラソン、成長を感じた前半戦と美しすぎる星空

アドベンチャーマラソンの舞台は整備されていない道なき道がほとんど。過酷な環境だ。
アドベンチャーマラソンの舞台は整備されていない道なき道がほとんど。過酷な環境だ。

成長を実感した前半5日間、220キロ

 清々しい朝だった。夜明け前の6時に起きると、雲ひとつない藍色の空が東から光を受けて白みがかっていた。夜の気温は5℃まで下がるので、寝袋からでるとまだ肌寒い。今日からは自前の食料でレースとなる。持参した固形燃料で湯を沸かし朝食のインスタントヌードルとコーヒーを作り、エナジーバーを食べた。今回は毎朝このパターンでいく。

 これから始まるレースのことを考えると恐怖と不安はあったが、ここまできたらあとは精一杯やるだけだ。目標は521キロ、すべての力をだして走り抜く。経験が乏しく順位のイメージはあまり持てなかったが、半分以上の12位までには入りたい。緊張と興奮がほどよい状態のまま、8時45分、いよいよスタート!

 初日はウェスト・マクドネル国立公園内のトレッキングコースを30キロだ。木々が生い茂るなか岩や小石がある道を進む。9ステージの長期戦になるので、初日は無理せず体調や装備を整えながら走ることにした。また精神を落ち着かせるためにも、他の選手のレベル、完走のタイムなどを確かめながら走る。水分を含み8.5キロとなったリュックは、ずっしりとした重みを感じるが、まだまだ序盤。無理せずマイペースで走り続けると、10キロのチェックポイントまでに、ハミとイシスを抜くことができた。ふたりが抑えているのか、自分が成長したのか。1年前は大敗していたから少し驚いたが、浮かれることなく走る。順調な足取りのまま、残り5キロにさしかかった。ふと前にドイツ人ランナーが立ち止まっていた。足が痙攣けいれんしている。僕はすぐさま余分に持っていたミネラルタブレットを渡した。アドベンチャーマラソンでは人から物をもらうことはルール違反でペナルティになる。だが身の危険がある緊急時は別だ。みな限界ギリギリのところで危険と背中合わせで競技をしているので、ライバルであろうとそこは助ける。僕は彼の安全を確認して、再び駆け出した。ゴールは5時間36分、8位だった。いい滑り出しだ。

 木々に囲まれた野原にゴールゲートが作られ、テントが設営されていた。すでにフィニッシュしていた上位選手と言葉をかけ合い、テントで休憩をする。

 足のトラブル、特にマメができるとレースの大きな障害になるので、少しでもリスクを減らすべく、1日走ってずれた指先のテーピングを剝がし、汗で湿ったソックスとシューズを天日干しで乾かす。快適な状態を保つためだ。足下が湿った状態だとすぐにマメになるので、この少しの手間が後々の結果に響いてくる。足裏、ふくらはぎ、太ももを重点的に、疲れた足をセルフマッサージしてほぐす。その後、湯を沸かしインスタントの焼きそばを頰張った。空腹と達成感がある中での食事は最高においしい。

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新刊紹介

北田雄夫

きただ・たかお
1984年生まれ、大阪府堺市出身。中学から陸上を始め、近畿大学3年時に4×400メートルリレーで日本選手権3位。
就職後は一度、競技から離れるも「自分の可能性に挑戦したい!」と再び競技を始める。
2014年、30歳からアドベンチャーマラソンに参戦。
17年、日本人として初めて「世界7大陸アドベンチャーマラソン走破」を達成。
現在は「世界4大極地の最高峰レース走破」にチャレンジ中。

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