2020.11.15
【11月15日 きものの日】履物と着物の「一寸」は長さが違う! 『着物憑き』で学ぶ和装文化の世界
昭和41年に、全日本きもの振興会が、着物の普及と振興を目的として制定しました。
そこで今回は、きものの日にぜひ読みたいエッセイ集『着物憑き』をご紹介します。
著者は、着物をこよなく愛し、“着物沼”にハマっていると自認する、作家の加門七海さんです。
本書では、着物の流儀や歴史、小物にまつわる知識などについても丁寧に解説。
日頃から着物を愛用している人はもちろん、「和装ってよくわからない、難しそう」と敬遠してしまっている人にこそ、オススメしたい1冊です。
(構成/「よみタイ」編集部)
着物をめぐる怪しくも不思議な十一の談
『着物憑き』は着物にまつわる言い伝えや怪談をまとめたエッセイ集。
著者は、日本古来の呪術・風水・民俗学などに造詣が深く、豊富な心霊体験を持つ作家・加門七海さんです。
市松人形のために手に入れた着物。夜、袖から白い女の手が――。
友人の祖母の遺品。美しい振袖がいつの間にか見当たらなくなり――。
日常的に着物やアンティークを身につける加門さんが実際に体験したり、見聞きしたりした、着物をめぐる怪しくも不思議な逸話が綴られています。
履物と着物の「一寸」はなぜ違う?
本書では、着物の流儀や歴史、小物にまつわる知識なども多数紹介。
着物怪談を楽しみながら、和装文化について学ぶことができます。
例えば「一寸」という長さの単位について。
実は、履物と着物の一寸は、長さが違います。同じ一寸なのに、どうして長さが変わるのでしょうか。
下駄でも草履でも、着物の履物は台から少し踵が出るのが良いとされている。
私の感覚だと、例えば足の大きさが二十三センチなら、台の長さも二十三センチ。先端から三センチほど下がったところに鼻緒の前(前壺)がつくので、踵は二センチほど外に出る。
これを尺貫法で言い直すなら、鼻緒の前壺は履物の先端から一寸下がったところにつくため、踵が六、七分ほど出る、となる。
履物の採寸に使うのは曲尺であり、一寸は約三・〇三センチメートル。曲尺は建具や家具の寸法を測るときに用いるものだ。それを履物に使うのは、下駄の素材が木だからなのか。理由はよくわからない。
一方、着物の仕立てに用いられるのは鯨尺だ。こちらの一寸は約三・七八八センチメートル。
統一されないのは不便だが、もっと面倒臭くすると、足袋のサイズは文で測る。一文は約二・四センチメートル。
つまり、足のサイズが二十三センチの人ならば、足袋のサイズは九文七分。下駄や草履は七寸六分。それを着物の寸法に直すなら六寸ということになる。
あまりにややこしいので、最近は着物も履物もメートル法を使うところが増えている。しかし、和服の世界では尺貫法はまだまだ現役だ。長く着物とつきあいたい人は、覚えておいたほうがいいだろう。特に曲尺と鯨尺を間違えると悲惨なことになる。(本書「東と西」より)
着物の奥深い世界が堪能できて、和装文化入門書としてもオススメの1冊。
読み終わる頃にはあなたも着物の“沼”にハマっているかもしれません。
書籍『着物憑き』の詳細は、こちらから!