2020.11.8
“作家・川村エミコ”の生みの親!? 石田衣良が読む『わたしもかわいく生まれたかったな』
この本誕生のきっかけとなったのは、『池袋ウエストゲートパーク』『娼年』など数々のヒット作をもつ作家・石田衣良さんの一言。
「その話、本にしたらいいよ!」
その言葉を胸に、ひたむきに書き綴ったエッセイを、生みの親とも言える石田衣良さんご本人に読んでいただきました。
(聞き手・構成/よみタイ編集部 撮影/齊藤晴香)
「鳥の目」を持つ人
――今回のエッセイを書くにあたって、川村さんは本のあとがきに、「石田さんが背中を押してくださった」と明かしています。テレビの収録でお会いした石田さんが、川村さんのお話を聞いて、「本にできるよ!」と言ってくださった……とのことですが、そのことを石田さんは覚えていらっしゃいますか?
もちろん覚えています。
去年の夏ごろに、NHKの番組の収録で初めてお会いしたんです。待ち時間がわりとあって、川村さんといろいろお話しをしました。
学生時代にいじめられた話とか、もてなかったっていうような話を淡々とされてたんですね。そういう話ってどうしても湿っぽくなってしまいがちなんだけど、川村さんの場合は、クラスメイトであったり、先生であったりを、全部上から、俯瞰で見えているような話し方をしていたんです。こういう「鳥の目」を持っている人だったら、文章の世界って合っているんじゃないかなと思った。それで、「面白いから本にしたらいいよ」と言いました。
――川村さんは、石田さんの「本にできるよ」という言葉はリップサービスで、真に受けてしまってよいのかどうか迷っていたと仰っています。
「本にできるよ」なんてみんなに言っているわけじゃないですよ(笑)。
ある程度お話しをしていると、その人のインテリジェンスっておのずとわかるじゃないですか。川村さんの話し方には、自分の頭の中を整理できている感じがあって、何かを語るときに、最適な語り方ができている人だなって思ったんです。
例えば、好きだった男の子に「粘土」ってあだ名をつけられたエピソード。ここ、普通なら爆笑するような語りにしたくなるエピソードなんだけど、そうじゃなくて、ちょっといい話なんですよね。どちらにも偏らせない絶妙なバランスを取っている。
従姉妹の女の子と、ポシェットの色を選ぶという話でも、かわいい子特有の暴力性というか、図々しさみたいなものがよく出ている。エッセイを読んで、やっぱり独特の語り口や視点を持っている人なんだなというのは感じました。
――初対面でお話しした際の石田さんの直感は間違っていなかったということですね。
誰かから話を聞いて、「それ面白いよ、本になるよ」と言ったことは、これまでに何回かありますけど、本当にちゃんと仕上げる人ってめったにいないんですよ。
このエッセイは隔週で連載していたんですよね? 月に2回、このボリュームを書けるというのはすごいことだと思う。