2020.9.19
川村エミコの、静かで暗い最初の記憶〜「悲しみのマミー券」
お弁当の時間。
麦茶がみんなに配られるのですが、マミー券というものがあり、それをお母さんに買ってもらい、朝マミー券を渡しておくと、お弁当の時間に森永マミーが飲めます。
うちにとってはマミーは特別で、一か月に一回いつもお母さんにお願いしてお弁当の時間に飲んでいました。
あの日以来、先生の顔がなんだか見れなくなり、マミー券を渡すのも受け取るのも伏し目がちになってしまったのを覚えています。
夢は、大きい家具に追いつかれると、紙を丸めるようにぐちゃぐちゃとした画面になり、そのあと急に幼稚園の上空からの映像になります。そしてだれか分からないのですが、綺麗な声が聞こえます。
「幼稚園がなかったら?」
映像は日本の上空からになりどんどんどんどん広がって、やがて宇宙から見た地球の映像になります。そしてまた聞こえます。
「地球がなかったら?」
そのあと、一瞬真っ暗になり、光を放ち、いつも夢は終わります。
この日から私はどうやら更に暗くなりました。
幼稚園のある日のことでした。
川村エミコさん初のエッセイ集、予約受付中!
単行本では、エッセイの他に、川村さん秘蔵のこけし写真や描きおろしイラスト、幼少期からのアルバムページなども収録。“川村ワールド”をたっぷりとご堪能ください!
書籍『わたしもかわいく生まれたかったな』の詳細は、こちらから。