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『全裸監督』本橋信宏と『限界風俗嬢』小野一光が教える「相手の心を裸にし、本音を引き出すインタビュー術」

筧千佐子死刑囚が見せた「バイバイ」

本橋 何度も面会して本も書いた筧千佐子(編集部注:近畿連続青酸死事件の被告。7月に死刑が確定)には惚れられてたじゃない。

小野 僕、死刑が確定する直前に会いに行ったんですよ。その前に、彼女には「もう会わない」って言われて終わってたんですね。それ以降、何度か面会を申し込んでも駄目だった。

本橋 逆に振られちゃったんだ。

小野 だけど、最高裁で上告棄却されたんで、これで死刑が確定する、と。確定したらもう、基本的に弁護士や家族以外との面会はできなくなるんです。だからこれが最後の機会になると思って面会を申し込んで。そしたら会ってくれたんですよ。そのときは僕も、なんで急に会ってくれなくなったかとか聞かなかったんですね。「でも、会わなくなる人とかもいるでしょう」って第三者のような感じで言ったら、それは私だって嫌な人とはもう会わないよって返してきて。じゃあまた会ってくれたってことは、嫌じゃなかったんだ、というふうに思うようにして。彼女、別れ際に「ありがとうね。私はこれでサヨナラ」って、胸のところで両手をひらひらっとさせて言ったんです。

本橋 本人はもう死刑が確定するってわかってるわけですよね?

小野 わかってます。僕も、お別れを言いにきたと言ってるんで。
私はもう、明日のこととかを考えないようにしてる、と。この先、何したいとかそういうことを考えるとつらくなるから、そういうのは一切考えないで、出てきた食べ物のことを考えたりとか、そういうことぐらいしかしてないという話をしてましたね。

本橋 殺人犯とはいえ、切ないお別れの言葉ですね。

小野 でも、最後に会えて良かったですよ。会えなかったら、書き逃げになるような感じがしたし。
僕は、2~3年会ってて、死刑が確定してもうこれで会えなくなるという別れを何回か経験してるんですけど、あれは、たとえ凶悪犯人であっても、こちら側もぐっとくるものがありますね。

人は「語りたい生き物」

本橋 さっき、小野さんは結構聞きづらいことを正面から聞くって言ってたけど、私は本来意気地なしだから、普段の自分だったら聞けないよね。仕事だからできてるんだろうなって思う。

小野 後から、あんなにずけずけと聞くんじゃなかった、とか思うことあります?

本橋 そう思うときもあるし、逆にもっと踏み込めばよかったと思うときもあるし。

小野 こんなこと聞いていいのかな、とか思っていたらできない仕事ですよね。
基本的に僕は、人は語りたい生き物だとは思ってるんですよ。だから、隠したいことはいっぱいあるけど、それも全部しゃべって解き放たれて楽になりたいっていう気持ちがあると思ってるから。

本橋 秘密は自分一人の胸ではとどめておけないですからね。
人に話すことで、自分の考えとかやってきたことは間違っていないか、正しかったかっていうのを、確認したいものなんですよ。答え合わせみたいなものかな。そこに小野さんはうまくすっと入り込んで。

小野 いや、同じセリフをそのまま返させていただきます(笑)。

ノンフィクションという場で長年活躍されてきたお二人。共通の知人も多く、話題と笑いの絶えない、濃密な対談となりました!
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本橋信宏

もとはし・のぶひろ
1956年埼玉県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。ノンフィクション・小説・エッセイ・評論と幅広い活動を行う。2019年、『全裸監督 村西とおる伝』がNetflixでドラマ化、世界190ヵ国に配信され大ヒットを記録する。『ベストセラー伝説』『東京裏23区』『高田馬場アンダーグラウンド』『新・AV時代 全裸監督後の世界』など著書多数。最新刊は『出禁の男 テリー伊藤伝』。

小野一光

おの・いっこう
1966年、福岡県北九州市生まれ。雑誌編集者、雑誌記者を経てフリーに。「戦場から風俗まで」をテーマに、国際紛争、殺人事件、風俗嬢インタビューなどを中心とした取材を行う。
著書に『灼熱のイラク戦場日記』『風俗ライター、戦場へ行く』『新版 家族喰い——尼崎連続変死事件の真相』『震災風俗嬢』『全告白 後妻業の女』『人殺しの論理』『連続殺人犯』などがある。

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