2021.12.30
翻訳家・村井理子さんが絶賛! ノンフィクション好きなら観るべき「ドキュメンタリー」3作
本特集では、エンタメをこよなく愛する「よみタイ」の執筆陣に、2021年にハマったサブスク動画を紹介していただきます。1年を締めくくる特別企画です!
前回は、エッセイストの酒井順子さんが今年ハマった韓国ドラマをご紹介くださいました。
今回ご登場いただくのは、翻訳家の村井理子さんです。日頃から忙しい執筆業や家事の合間を縫って、国内海外問わず、様々なドキュメンタリー作品を観ているという村井さん。
今年観た中から、特におすすめの3作を紹介していただきます。
これまでたくさんのノンフィクション作品の翻訳を手がけてきた村井さんの心を揺さぶった、最高のドキュメンタリー作品とは……?
(文/村井理子、構成/「よみタイ」編集部)
とことん笑わせ、泣かせ、考えさせる『徘徊 ママリン87歳の夏』
大阪北浜に住むアッコ(酒井章子)と認知症の母(ママリン)との日々を記録したドキュメンタリー。ギャラリー兼自宅マンションはとても住みやすそうな空間で、そこだけ切り取れば仲良し親子の最高に素敵な二人暮らしなのだが、連日繰り広げられる章子さんとママリンとの丁々発止のやりとりが、このうえなく愉快、痛快、それなのに、章子さんの絶妙なツッコミとママリンのボケが、とことん泣かせてくれるのが不思議。母と娘の愛情とは、なんと複雑で、時に悲しく、そして強いものなのか。
章子さんは覚悟を決めて母ママリンの介護に挑むが、ママリンの徘徊ははっきり言って金メダル級。家出回数は1000回を超え、徘徊時間は2000時間に迫る。一日の最長徘徊時間は15時間、最長徘徊距離は12キロ! そしてなにがすごいかというと、章子さんはママリンの徘徊のほとんどを、ママリンを見守りながら自分も歩くことで見守っているのである。大都会大阪を何も持たずにスタスタ歩き回るママリンから少し距離を取りながら、章子さんは見守り続ける。これは、簡単にできることではない。親子とは、そして介護とは。とことん笑わせ、泣かせ、考えさせる良ドキュメンタリー。