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【ひろゆき VS 竹中平蔵 炎上必至の口喧嘩対談】竹中平蔵がパソナ会長になった理由とは?

自民党に都合の良い「分配」

ひろ 今のお話を聞く限り、竹中先生は岸田文雄首相の「成長と分配の好循環」のテーマに同感なんですね?

竹中 岸田さんは総裁選の際に言ったことを今どんどん変えています。2021年10月の代表質問では「『成長か分配か』ではなく『成長も分配も』が基本スタンスだ」と答えています。まず経済の成長がなければ分配なんてできない、次の成長を可能にするために今、分配が必要なんです――と。すごく常識的なことを言ってますよね。新自由主義の否定とか、成長の否定とかは、総裁選のときのキャッチフレーズとして使いましたが、その後は非常にリアリスティック。小泉さんや安倍さんや菅さんが言ったのと、ほとんど同じようなことを言っているように思います。

ひろ 小泉首相の時代から「分配は必要だよね」っていうのは表向き言うんですけど、でも結局、自民党政権の間に分配はやらなかったわけじゃないですか。で、岸田さんも分配が必要って言うんだけど、だんだんトーンダウンしてますね。そうすると、分配というのはもうずっと起こりえないんじゃないかという気がしました。

竹中 じゃあ、分配政策っていうのはそもそも何なのか、ということを考えなきゃいけませんよね。実は自民党政権下の日本はものすごい分配をやってきたんです。東京から地方への分配。なぜなら地方交付税*6っていうのは約16兆円あるわけですよ。加えて、中小企業に対する手厚い補助金と減税。その意味で、自民党政権は分配をやっているんです。ただし問題は、自民党の票に結び付きやすいところに、ということですが。でも今問題になっているのは、フリーランスやコロナ禍で困窮している人であって、そういう方々への新しい本当の分配政策を考えなければいけません。そういうことで、私は何年も前からベーシックインカム*7的な考え方で、特定の業界や地方にではなく、個人に直接給付されるようなものが良いだろうと主張しています。

ひろ まぁでも自民党が票になるところには分配するって言っても、仮に99%の人が自民党に投票するなら、全ての人に分配しなくちゃいけなくなる。それだと今まで配っていたものを削って、配っていなかった人に配ることになるじゃないですか。パイは限られているから。増税をするか、既に配っている分を減らすかの選択になるわけで、そうするとどこかに敵をつくり、国民の誰かにひもじい思いをさせなければいけないですよね。国民の誰が貧しくなるのか、というのは構造としてもう変えられないんですか?

竹中 「パイは限られている」と言われましたが、だからこそ全体の成長が必要なんです。その上で国民を説得するために、「痛みに耐えて改革しよう」という強いメッセージを持ったリーダーが出てこないと実現できないですよ。みんなの言うことを聞いて、みんなで決めましょうと言うんじゃ構造は変えられないわけです。
 確かに今もたくさん無駄なお金を使っているんです。例えばね、経団連*8の会長に年金を配っているんですよ。そんなの必要ないはずです。コロナ禍で一度全国民に10万円配られましたけど、もらう必要のなかった人たちも多かったはずです。そういうところを変えていく必要があります。

ひろ でも人間の本質として、「もらえてるお金は、もらい続けたい」ってのは普通なのでは? たとえ経団連の会長であっても、もらえるものはどんどんほしいってなるわけじゃないですか(笑)。

竹中 そういうのを既得権益って言うわけですよね。既得権益。

ひろ でも、竹中さんもすげー財産はあるけど、パソナの株の配当とか役員報酬とかもらって、別に寄付したりもしないわけじゃないですか? それも既得権益と同じなんじゃ。

竹中 私、寄付してますけども。

ひろ 収入のうちの何パーセントくらいですか?

竹中 そんなこと、ここで言う問題じゃないでしょ。それは私の財布の中身のことなんだから。

ひろ いやつまり、生活に必要な額以上のお金を持っている人でも、もっとほしいってなるのは変わらないですよね、って言いたいんです。

竹中 それは人間のグリード(欲望)だから、当然です。グリードがあるから、経済社会は進歩してきたのです。

ひろ だから、経団連の会長が年金もらって良くないってさっき言いましたけど、竹中さんもできないんだから、経団連の会長を責めるのもおかしくないかなって思ったんですよ。

竹中 違う違う。私は、経団連の会長を全く責めてないですよ。私は制度を責めてるんです。制度を変えない限り、例えば一部の人が寄付したって、一部の人に分配したって、世の中変わらないんです。サッチャー*9の有名な言葉がありますよね。「金持ちを貧乏にしたところで、貧乏人が金持ちになるわけではない」。だからやっぱり別のシステムを考えなきゃいけなくて、それを今みたいに「お前はたくさん財産を持ってるぞ」「お前は高給をもらってる」とか言っても意味なんかないんです。そもそも私はただの大学教授なのでお金なんて大して――

ひろ でも、パソナの株持ってますよね?

竹中 ええ、役員だから当然持ってます。基本的には、みんな豊かになりたいと思って頑張るわけですよ。頑張る人が報われるようにしないと社会なんか進歩しませんよ。

ひろ すみません、ちょっと誤解されたかもしれないですけど、竹中先生が言っていることは論理的に正しいと僕は思っています。ただ、話の端々でちょっと誤魔化すじゃないですか? 例えば普通の大学の先生は、上場企業の株なんて持っていないし、会長の役員報酬もないじゃないですか?

竹中 ええ。

ひろ なので、今この時点で「大学教授だから、そんなにお金がない」って言っているのは嘘ですよね?

竹中 いやいや、嘘じゃなくて、私は大学教授だからお金ないですよ。若干兼務してるけども――

ひろ 大学教授以外の収入があるじゃないですか?

竹中 別に大学教授以外の収入がないなんて言ってないじゃないですか! 私の本業は大学教授だから――

ひろ それは要は誤魔化しじゃないですか?

竹中 誤魔化しじゃないですよ。

ひろ 誤魔化しですよね?

竹中 ひろゆきさん、申し訳ないけどそれはイチャモンだよ。だって私の収入のメインは大学教授であって、その上で他のことをやってるだけです。みんなだって、本業以外の他の仕事をやるじゃないですか。でも私は別に実業家じゃないから、孫正義さんみたいに儲けているわけではないし――

ひろ いやいや、孫さんみたいに儲けた人なんて、日本に1人しかいないじゃないですか。

竹中 私はお金を儲けようと思って人生を生きてきたわけではないし、私は経済のことを研究したいと思って生きてきたわけだから。それは全然違うということを申し上げているだけですよ。

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新刊紹介

ひろゆき

本名:西村博之。1976年神奈川県生まれ。東京都北区赤羽で育つ。96年、中央大学に進学。在学中に、アメリカ・アーカンソー州に留学。99年、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設し、管理人になる。2015年、英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。19 年、SNSサービス「ペンギン村」をリリース。著書に『1%の努力』、『無敵の独学術』、『ひろゆきのシン・未来予測』などがある。

竹中平蔵

1951年和歌山県生まれ。一橋大学経済学部卒業後、73年日本開発銀行入行。81年に退職後、大蔵省財政金融研究室主任研究官、ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学総合政策学部教授などを経て、2001年より小泉内閣で経済財政政策担当大臣、郵政民営化担当大臣などを歴任。現在、慶應義塾大学名誉教授、世界経済フォーラム(ダボス会議)理事などを務める。著書に『平成の教訓 改革と愚策の30年』、『考えることこそ教養である』などがある。

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