2021.6.11
「コロナ禍で頑張る子どもたちと学校の先生にエールを送りたい!」。『漫画家しながらツアーナースしています。』発売記念対談<後編>
コロナによって不登校の子どもが増えている
明 予防意識に関連するところだと思うのですが、コロナ前は体調が悪くても無理して仕事に出勤したり、頑張って学校に行ったりするのが良しとされていましたよね。その結果、風邪やインフルエンザが広まってしまうこともよくあったと思います。
ツアーナースの現場でも、団体行動が基本ですから、本来であれば熱があったり体調に不安があったりする子どもは休ませ、感染症の疑いがある場合には隔離した方がみんなを守ることにつながるのですが、なかなかその徹底が難しくて、たとえ隔離したとしても、方法が徹底されていなくて、結局感染を広げてしまうということは、よくありました。
コロナをきっかけに、無理せず休む、他の人にうつる可能性がある場合は、きちんと隔離するということが当たり前になっていくといいなと思っています。
坂本 そうですね。昔は「熱があるくらいで休むな」とよく言われたし、「皆勤賞」なんていうものもあって、「しんどくても行くのが重要」でした。
でも、学校に行くことが「絶対的な善」だと、それが不登校など学校に行けない子どもたちのプレッシャーになって、余計に学校に行けなくなってしまうこともある。これが善だという絶対的な価値観ではなく、「価値観は一人ひとり違うんだ」という認識へ少しずつ変わっていったらと思います。
明 私も、ツアーナースとして、不登校の子どもが通う学級やフリースクールの宿泊行事に参加するようになって、その先生たちから「ゴールは学校へ行くことではない」ことを教えてもらいました。これは病院の中だけでは気づけなかったと思います。
坂本 私たちの子ども時代と今とでは価値観が違うから、それを自分で気づいて変えていくのはなかなか難しい。私も診察や出前講座などで出会う子どもたちから日々たくさんのことを学ばせてもらっていて、ありがたいと思っています。
明 そういう意味では、私はコロナ禍でツアーナースの活動が全くできなくなってしまいましたし、コロナ治療にも携わっていないので、今の現場の声や感覚がわからないのですが、坂本先生はコロナの前と今とで何か印象的な変化はありましたか。
坂本 コロナによって小児医療は大きく変わっています。もともとは熱が出ればすぐに病院へ、という保護者は多かったですが、今は病院に行くと感染のリスクがあると考える保護者が増えたので、単純に患者さんの数はすごく減りました。マスクや消毒、ソーシャルディスタンスなどの意識も高まったことでインフルエンザなどの感染症にかかる人の数が減ったこともあると思います。
でも中には、本当は子どもの体調が心配なのにコロナが怖くて病院に行けないという保護者もいる。体調の思わしくない子どもと向き合って、不安を抱えながら家で過ごすというのは、保護者にとっても負担が大きいことだと思います。
また、不登校の子どもが増えたというデータもあります。
昨年の春頃、最初の緊急事態宣言が発令されて、休校の措置が取られた時は、もともと不登校だった子の中には「他の子たちも学校に行けないんだから大丈夫」と、一時的に少し元気になった子も実際いました。
でも9月頃にその反動が一気に出て、もともと不登校だった子はさらに体調が悪くなり、それまで不登校じゃなかったのに学校に行けなくなる子も増えました。
子どもにとっては学校と家が世界の全て。休校になっていきなり世界の半分が消えて、それまでの日常生活が大きく変わるわけですから、心身にかかる負担は大人以上です。特に小学校高学年から中学生の、心身に不調を起こしやすい年齢の子どもに体調の悪化や、不登校の生徒が増えているなと感じています。