2021.6.11
「コロナ禍で頑張る子どもたちと学校の先生にエールを送りたい!」。『漫画家しながらツアーナースしています。』発売記念対談<後編>
現役漫画家にして、修学旅行や林間学校に同伴する看護師、通称「ツアーナース」である著者が描くハートフル・コミックエッセイの第3集です。
この発売を記念して著者の明さんと、本書の監修を務めた坂本昌彦医師(佐久総合病院佐久医療センター小児科医長/「佐久医師会 教えて!ドクタープロジェクト」リーダー)の特別リモート対談が実現。
トーク前半は、正確な医療情報を伝えるための努力や、正しい情報の見分け方がテーマでした。
今回お届けするのはその後編。
医療従事者として子どもたちと接する機会の多いお二人が、新型コロナウイルスによる小児医療の現場の変化や、子どもや学校の先生たちの頑張る姿について語ってくださいました。
(構成/「よみタイ」編集部)
子どもの時から正確な医療情報に触れることの大切さ
(前編から続く)
坂本先生(以下、坂本) 明さん。突然ですが、「予防接種」と「ワクチン」、どちらの言葉が一般的には不安を感じやすいと思いますか。
明さん(以下、明) カタカナなので「ワクチン」でしょうか。
坂本 そうなんです。先日Twitterで、「二つの言葉の感じ方に違いはあるか、違うとしたらどちらが安心できるか」という趣旨のアンケートをとったところ、回答者約4000人のうち、1位は約5割で「同じ」という回答でした。ただ、違いを感じると答えた人の8割くらい、つまり全体の約4割は「予防接種の方が安心できる」と回答し、「ワクチンの方が安心できる」という人はほぼいませんでした。
私は小児科医として長い間、予防接種もワクチンも全く同じ意味の言葉として使っていたので、半数近くも感じ方に違いがある人がいることは驚きでした。
それで、書きかけの原稿を見直し、ワクチンの箇所を急いで予防接種に書き換えました(笑)。
明 へー! 今聞いて私もすごく勉強になりました。伝える際に、わかりやすい、安心されやすい言葉を使うのは大事ですね。
でも、同じ意味なのに言葉によって印象が変わりやすい人は、いろんな情報に惑わされやすかったり不安を感じやすかったりするんじゃないかな、とも思ってしまいます。そういう人ほど、「教えて!ドクター」のアプリを活用するとか、自分にとって指針なるような信頼できる医療情報を持っていてほしいです。
坂本 そうですね。私は小児科医として、このコロナをきっかけにやっぱり予防接種のすごさを知ってほしいという思いがあります。大人ももちろんですが、子どもも予防接種について勉強するきっかけになってほしい。小さい頃から正確な知識を学んでおけば、成長してからも不正確な情報に惑わされずにすむと思うので。
明 そうですね。病院で接していた患者さんたちも、どんな情報に触れてきたかによって、治療や健康に関する情報の入り方がぜんぜん違うと感じました。
子どものときから学校で病気や医療に関して正しい知識を学べる機会が増えたらいいのにとも思います。
「漫画家しながらツアーナースしています。」を描いているのも、日常の中でちょっとした“先生代わり”になってくれたらいいな、という思いもあるからなんです。
坂本 子どもも読めるものってすごく大事ですよね。将来の投資というか。
人間は最初に知った情報が一番記憶に残りやすくて、それを修正するのってすごく難しい。特に小さい時に知ったことってすごく記憶に残るので。明さんの漫画を子どもの頃に読んだら、大人になった時に役に立つと思います。集英社さんにぜひ頑張っていただいて(笑)、学校の教科書に採用してほしいくらいです、本当に。
実はうちの病院の待合室にも置いているのですが、診療待ちの間に、けっこう手にとってくれる方が多くて、ありがたいんですよ。
明 それは私もうれしいです。「ツアーナース」を学校の図書室や塾の休憩室で読んだとか、保健室で養護の先生と読んだとか、そういうコメントをもらうこともあって、本当にうれしく思っています。
坂本 学校の図書室にあるのはいいですね。子どもは本の影響を受けやすいので、図書室にどういう本が置いてあるかは、すごく大事です。
逆の例なのですが、実はある学校の図書館に「予防接種は危ない」という内容の本が置いてあって、それを読んだ子どもが「怖い! 予防接種なんてもう絶対受けない!」となってしまい、困り果てたお母さんに相談を受けたエピソードも実際にあったんです。