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〝空の巣症候群〟の女性を惹きつけた甘いチューハイ

「毒親」という言葉に救われる人たち

 ACの人たちは、育った家庭でこうした適応の仕方を学習するしかなかったため、大人になってからも背負ってきた役割から抜けられず、そのことが、その人自身を縛る生きづらさにつながっていきます。
 
 しかし、それは生きづらさでもある一方で、能力でもあります。クリントン元大統領は、自身の環境により磨かれた、稀有な才能によって世に出ることになったのです。
 
 取り立てて大きな問題がなくても、子どもが育った家族の中で背負う役割というものは多かれ少なかれ存在します。それは、その人が原家族の中でサバイバルしていくために必要な役割なのです。それが大人になってからも生きづらさとして抜けない人もいますし、一方、社会の中で認められるケースもあるので、足を縛る鎖でもあり、その人の能力、もしくは個性とも言えるのではないでしょうか。
 
 アルコール依存症の家族に限らず、近年は「毒親」という言葉が一般名称化し、さまざまな人が、自身の生きづらさの原因を、親子関係に求めるようになりました。
 
 これは一つの大きなターニングポイントで、親を一時的に責めることは、本人が回復に向かう上でとても重要な行為なのです。本当は私はあのときつらかった、寂しかったのだと、後からでも親を責め、自分を慰めることで、ようやく自分を縛っている鎖に気づくことができる人もいるのです。

(編集協力:西野風代)

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新刊紹介

斉藤章佳

さいとう・あきよし
精神保健福祉士・社会福祉士。大森榎本クリニック精神保健福祉部長。
1979年生まれ。大学卒業後、アジア最大規模といわれる依存症施設である榎本クリニックにソーシャルワーカーとして、アルコール依存症を中心にギャンブル、薬物、摂食障害、性犯罪、児童虐待、DV、クレプトマニアなどあらゆるアディクション問題に携わる。その後、2016年から現職。専門は加害者臨床で「性犯罪者の地域トリートメント」に関する実践、研究、啓発活動を行っている。また、小中学校での薬物乱用防止教室、大学や専門学校では早期の依存症教育にも積極的に取り組んでおり、全国での講演も含めその活動は幅広く、マスコミでもたびたび取り上げられている。著書に『性依存症の治療』『性依存症のリアル』『男が痴漢になる理由』『万引き依存症』『「小児性愛」という病——それは、愛ではない』がある。

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