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〝空の巣症候群〟の女性を惹きつけた甘いチューハイ

アダルトチルドレンの5つの特性

 ACとは、いわゆる「機能不全家族」で育った子どもを指す言葉です。本来は「Adult Children of Alcoholics=アルコール依存症の親を持つ成人した子ども」という意味の言葉でしたが、最近は定義が広がり、機能不全家族の中で育った子どもや、現在の自分の生きづらさが親との関係に起因していると認めた人を意味する言葉となっています。
 1990年代初めの頃には「ACムーブメント」が起きて、ACを自認して精神科を受診する人が増えました。今では、ACという言葉自体があまり使われなくなりましたが、依存症の問題を読み解く上では重要な鍵概念です。
 
 親が何らかの依存症である、夫婦間・親子間にDVや虐待の問題がある家庭で育つ、あるいは親との早期の死別や離別といった経験をした子どもは、安定した家庭環境で過ごすことが非常に困難です。また、親との基本的な信頼関係や愛着関係を構築することも同様です。そこを生き抜くために、AC役割と言われる五つのサバイバルスキルを身に付けます。
 
 一つめは「ヒーロー」。優等生的な役割です。家族の中で自分が優等生でいれば、皆がこちらに注目するので、父親のアルコール問題から目をそらすことができます。
 アメリカのクリントン元大統領は自身がACで、それを克服したことを宣言して大統領選挙に出馬し、当選しました。その後セックス依存症になり、ホワイトハウスでセックス・スキャンダルを巻き起こした彼は、子どもの頃、酒に溺れて暴力を振るうアルコール依存症の継父から、母親を守っていた子どもでした。家族の中では常に、母親を守るヒーローの役割、いわゆる「いい子」を演じていたのです。
 
 このタイプは、人に気に入られようと過剰に努力し、職場や学校でも過剰適応しやすく燃え尽きてしまい、その後飲酒をするという悪循環のパターンを身に付けているケースが多いです。
 
 次が「スケープゴート」。これは、「生贄いけにえ」や 「身代わり」の意味で、ヒーローとは逆に問題行動を起こすことで、家族の関心を父親のアルコール問題から自分のほうに向けさせるのです。非行などの問題を起こす子は、こういうタイプの子が多いです。
 親の問題を顕在化させないため、子どもは体を張って非行をしているのです。
 
 三つめは「ピエロ」です。ピエロは「道化師」ともいいますが、冗談を言ったり、人を笑わせる役割を果たすことをいいます。現実に直面することへの不安や怒りの表現を隠すのに、やたら元気にふるまったり、喜んだり、慰める役回りの子どもを演じるのです。ユーモアや他者を笑わせることで家庭内の緊張を緩和してきたため、成長してからも進んでピエロ的役割を担わなければ適応できないという生きづらさがあります。
 
 四つめは「ロストチャイルド」です。ロストチャイルドとは、「いない子」「存在を消す子」のこと。家族の中で、ずっと自分自身の存在を消して適応してきた子です。
 かつてのクラスメイトにも一人か二人ぐらい、いるかいないか全くわからないような子がいませんでしたか。それは「自分の存在を消す」という集団への適応の仕方なのです。
 
 父親が酒を飲んで帰ってくると、夫婦げんかで包丁が飛び交ったり、家中の物が壊されたりと、戦争のようになることもあります。「地獄を見たければアルコール依存症の家族を見ろ」と言われるくらいなので、子どもはなんとかそういう地獄が過ぎるのを身を隠しながら待ちます。自分の存在を消し、「早く終わってくれないかな」と待っているわけです。こうした子どもは「自分がいい子じゃないからお父さんはお酒を飲んで帰ってくるんだ」というような誤った学習をしてしまうこともあります。
 
 最後が「ケアテイカー」、お世話焼きです。常に他人の問題に振り回されるタイプの人。幼少期から父親のお酒の問題に振り回され、その尻ぬぐいをしてきた、あるいは、小さい頃から母親が病気で、その介護をしてきた、など、家族の中で誰かの世話をする役割をずっと背負ってきたケースです。
 
 ケアテイカーは、成長した後も慣れ親しんだ行いの延長として援助職を選ぶことがあり、そのため看護師やソーシャルワーカーのような仕事をする人にAC特性が高いという傾向が見られるのではないでしょうか。
 
 ケアテイカーの役割は、依存症家族においては「イネーブラー(支え手)」といいます。本人の問題を周りが尻ぬぐいしてしまい、転ぶ前に障害物を取り除いてしまうので、結局は本人が自分の問題に気づくことを先延ばしにします。
 
 よく依存症の治療の中では、「手放す」という話が出てきます。本人が自分のこととして問題に向き合うために、周囲は本人がギャンブルで作った借金は肩代わりしない、など、本人の問題を手放し、自分で考えてもらうということが重要なポイントになります。

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斉藤章佳

さいとう・あきよし
精神保健福祉士・社会福祉士。大森榎本クリニック精神保健福祉部長。
1979年生まれ。大学卒業後、アジア最大規模といわれる依存症施設である榎本クリニックにソーシャルワーカーとして、アルコール依存症を中心にギャンブル、薬物、摂食障害、性犯罪、児童虐待、DV、クレプトマニアなどあらゆるアディクション問題に携わる。その後、2016年から現職。専門は加害者臨床で「性犯罪者の地域トリートメント」に関する実践、研究、啓発活動を行っている。また、小中学校での薬物乱用防止教室、大学や専門学校では早期の依存症教育にも積極的に取り組んでおり、全国での講演も含めその活動は幅広く、マスコミでもたびたび取り上げられている。著書に『性依存症の治療』『性依存症のリアル』『男が痴漢になる理由』『万引き依存症』『「小児性愛」という病——それは、愛ではない』がある。

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