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〝空の巣症候群〟の女性を惹きつけた甘いチューハイ

 子育てに限らず、女性がケアワークの担い手となっている家庭は依然として多いのではないでしょうか。晩婚化などの影響で、子育てと介護が同時期に訪れる「ダブルケア」問題や、子育てを終えてすぐに介護に突入する女性が増えています。
 
 子どもの就学や就職など、終わりが見えやすい子育てに対して、介護の場合は、終わりは被介護者の死を意味するため、達成感や充足感を得にくいのです。
 看護師経験の長いFさんでも、自身の母親の介護となると、勝手が違う部分が多かったのでしょう。最後は、抗うつ薬や睡眠薬も手放せない体になっていました。特に認知症で、体力は衰えずに認知機能だけが損なわれてしまった場合、暴言や暴力、徘徊に悩まされ、介護する側の心身が激しく消耗するケースもあります。
 
 また、老々介護や8050問題を抱える家族も、ここにさらにアルコールが絡んでくるとより問題が複雑化します。今後の高齢者のアルコール問題における課題と言えるでしょう。

実は依存症と関連が深い〝親子関係〟

 今回のケースのFさんは看護師でした。
 看護師やソーシャルワーカーなど「ケアワーカー」と呼ばれる職種の人は、比較的転職をする人が多いと言われています。もちろん職場環境の問題や過酷な感情労働であること、資格職であり、需要が高くどこでも働けるからというのが一般的な理由でしょう。そして、結婚率が高く離婚率も高いという特徴もあります。こちらも、経済力があるため離婚に踏み切りやすい、とされています。
 
 こうした「職場を転々とする」「結婚と離婚を繰り返す」要因の一つとして、ケアワークを職業として選ぶ人には、AC(アダルトチルドレン)特性が高い傾向があることが関係しているのではないかという説は、医療関係者の間ではよく耳にします。筆者の知る範囲でも、両親に依存症やDVの問題がある人が珍しくありません。幼い頃から、父親のお酒の後始末をする娘、父親が家で暴れると母親と一緒に外に逃げて、ガレージで母親を守る息子といった役割を家で担っていたというケースです。父親が外で飲酒するとしょっちゅう警察から電話があり、そのたびに子どもである自分が泥酔した父親を警察署に迎えに行っていたという体験を語る人もいます。
 

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斉藤章佳

さいとう・あきよし
精神保健福祉士・社会福祉士。大森榎本クリニック精神保健福祉部長。
1979年生まれ。大学卒業後、アジア最大規模といわれる依存症施設である榎本クリニックにソーシャルワーカーとして、アルコール依存症を中心にギャンブル、薬物、摂食障害、性犯罪、児童虐待、DV、クレプトマニアなどあらゆるアディクション問題に携わる。その後、2016年から現職。専門は加害者臨床で「性犯罪者の地域トリートメント」に関する実践、研究、啓発活動を行っている。また、小中学校での薬物乱用防止教室、大学や専門学校では早期の依存症教育にも積極的に取り組んでおり、全国での講演も含めその活動は幅広く、マスコミでもたびたび取り上げられている。著書に『性依存症の治療』『性依存症のリアル』『男が痴漢になる理由』『万引き依存症』『「小児性愛」という病——それは、愛ではない』がある。

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