2021.4.26
爪切男×川村エミコ“同級生対談”。「本の中の爪少年は『鬼龍院蓮』と名乗っていいくらいイケメンなところがたくさん!」
「過去を美化することで、自分にはなかった器を足したので、本当にそういう人間になっていかないと」(爪)
川村 爪さん、「鬼龍院蓮」っていう名前で本を出したら、読者はすっごいイケメン作者を想像すると思います。それで後から顔を見たら、「あ……」って。私、今すごく失礼なこと言ってますね(笑)。でも本の中の爪少年は、「鬼龍院蓮」って名乗っていいくらい本当にイケメンなところがたくさんあります!
爪 それ、先輩や友達にも言われたんですよ。デビュー作の『死にたい夜にかぎって』を出したあとに、「おまえはもう一年、顔を出すのをやめとけば、もっといい思いできた」って。
わりと早めに顔出ししたのは、好きな女の子に「虫の裏側」ってあだ名つけられたような恋愛話を書いても、「どうせイケメンが書いてるんだろ」って声が届くようになったからなんです。実際にイケメンならいいけど、そうじゃないから、イケメン作家と思われながら読まれても困るし。顔出しすることでリアルさが出せたらいいなと。
川村 でも本の中では本当にイケメンですからね。
今日お話をうかがって、そうやって過去を美化して書く部分もあっていいんだって、勉強になりました。私も自分の過去のことをエッセイに書いていますけど、私の場合は、絵のように覚えている場面を、たとえば「あの時お母さんはこんなことを言った」とか「クラスの男子にこんなこと言われた」とか、温泉の源泉を掘り起こすように一つひとつ思い出して書き出していく感じなので。
爪 過去を美化することで、自分にはなかった器を足したので、本当にそういう人間になっていかないといけないという自分への戒めにもなっていると思います。今回の3か月連続刊行の1冊目である『もはや僕は人間じゃない』でも、LGBTについて自分の思うことや仏教の中道に基づいた生き方ついて書いたので、それに恥ずかしくない人間になりたいですね。だから書くって覚悟がいるし、怖いなとも思います。
川村 確かに。あと、女子の委員長とふたりで教室のワックスがけをするエピソードも印象的でした。ワックスがけの手順もすごく細かく書かれていましたよね。ああやって細かく書くと読む人にも伝わるんだなと、とても勉強になりました。私の学校とは手順が違ったのですがそれを思い出したのも面白くて。私の場合は、班で残されたんですけど、全部私に押し付けられたなあとか……。でもそこで助けてくれた男の子もいて。
爪 水飲み場とかもみんな思い出ありますよね。
川村 ありますねー。クラスの一軍男子が蛇口のところを手で押さえて水をピャーッと出して可愛い女の子にかけて、「やめてよ〜」ってキャッキャしてたりとか。私はかけられることはなくて普通に飲んでましたけど。「おまえは蛇口の上からじゃなく下から飲めよ」とは言われたことはあります。
爪 いろいろありますよね(笑)。同世代だとわかる学校エピソードも今回の本には多いと思います。
(※対談は後編に続きます。5月4日21時配信予定です。お楽しみに)
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爪切男さんが少年時代のエピソードを綴る全20篇のエッセイ集。ドラマ化もされたデビュー作『死にたい夜にかぎって』の前日譚ともいえる作品です。
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