2021.4.2
「人生はうまくいかないのが標準仕様ーしんどい時代に生きている君たちはむしろラッキーだ」(GO三浦崇宏)
なぜ、今あえて「対談」という形式を選んだのか、そこではどんな対話がなされたのか……三浦さんが本書に込めた思い、令和という新時代を生きる悩み多きみんなに届けたいことを語っていただきました。
(撮影/齊藤晴香、聞き手・構成/よみタイ編集部)
しんどい時代に生きているから、自分の幸せの在り処がわからなくなってる
――今回、対談形式の本を出版されるにあたっては、どのような背景があったのでしょうか。
この本はもともとウェブサイト「ビジネス インサイダー ジャパン」に連載していた対談をもとにつくったんです。
実は、そもそもまずその連載の依頼が来た時に「人生相談がやりたい」って思ったんですよ。
僕、人の相談にのるのが好きで、趣味なんです。
――人生相談が趣味!
はい(笑)。
僕が普段やっている広告の仕事って、基本、相談にのることなんです。出来上がったポスターやCMは結果として世に出たものに過ぎなくて、正しい答えが出ないことも多いからこそ、クライアントの相談にのって一緒に悩むことが、一番大事な仕事。
だから、うちの会社のみんなには「俺たちは業者になっちゃダメ。医者になんなきゃダメなんだ」とよく言ってるんです。
これってどういうことかというと、業者というのは言われたことをその通りやるのが仕事ですよね。「黄色い表紙の本つくって」と言われたら、その通り黄色い本をつくって納品する。
でも僕らの仕事はそうじゃない。「黄色い表紙の本つくって」と言われたら、まず「なぜ黄色い本をつくりたいのか」、クライアントの根本の悩みをじっくり聞いて探っていく。その結果、「女性に手にとってほしいから」みたいな本音や悩みが出てきたら、それを解決するための、もっといい答えを見つけてあげる。「じゃあ、黄色い表紙だけど、さらに文字をかわいくしてみましょう」とか。だから「医者になんなきゃダメだよ」って。
――まるで、カウンセラーみたいでもありますね。
そんな風に仕事をしているうちに、僕自身はダメな人間なんですけど、人の相談にはのれるという変わった人間になってしまって……。
それで、人の相談にのるというのを本業ではなく個人でやれたら面白いな、と……それが対談連載を始めたきっかけのひとつですね。
あと、今ってすごくしんどい時代だと思うんです。
だから、先に生まれていろいろ失敗しながらも生きている僕が、対談を通して若い人の助けになるようなことを伝えられたらいいなと思ったし、時代の最先端をいっているように見えるインフルエンサーたちも日々悩んでいるんだということがわかると、それは読者にとっても救いになるし、価値があるのではないかな、と。
――三浦さんの思う、今の時代の「しんどさ」って、具体的にはどんなことなんでしょう?
コロナ禍以降のしんどさというのももちろんあるんだけど、それよりも前から、すごく比べ合いをするようになりましたよね。誰々さんの方が有名とか、あの人みたいになりたいとか。すごく近いところで比べ合いをしてしまう。あと、足の引っ張り合いも。
誰かの失言とか、よくない行いとかを、「あの人がこんなことをやっていた」と、ミスを見つけて指摘することが「よく言った!」と称賛される風潮も一部あるじゃないですか。それでその指摘がツイッターとかでめちゃくちゃバズったり。
もちろん、指摘自体は完全に悪いことではなくて、世の中の自浄作用としては必要なことです。
でも今は、悪いところを見つけ出して、それを公衆の面前で指摘することが、インセンティブに働くようになってしまっている。
そういう意味で、比べ合いと足の引っ張り合いが加速している、しんどい時代だと思います。
――その加速には、やはりSNSの影響が大きい?
それもあるでしょうけど、SNSはあくまでもツールなので。
その手前にある「自分にとって何が幸せか」ってことが、みんなわからなくなっちゃっているんじゃないでしょうか。めちゃくちゃ裕福になってお金を配るような人になりたいわけでもないし、有名になったところで文春に叩かれたりして大変そうだし……とか。
それが、まえがきにも書いたんですけど、「大物にはなりたくないけど何者かにはなりたい」という、今の時代独特の中途半端な欲望を生み出しているんじゃないかな。
だからこそ、この本にのっている対話の中に、自分なりの幸せの見つけ方とか、人生の歩き方のサンプルを見つけてもらえたらな、って思っています。