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あなたの飲み方、大丈夫?
安く、飲みやすく、簡単に酔える、アルコール度数9%以上の「ストロング系チューハイ」の登場によって、お酒の問題を抱える人が増えています。

精神保健福祉士・社会福祉士である斉藤章佳が、酒飲みにやさしい国・日本のアルコール問題をさまざまな視点から考える『しくじらない飲み方 酒に逃げずに生きるには』(集英社)。
書籍の内容を一部変更して、お酒を飲みすぎてしまう人たちのケースを全6回にわたり紹介します。
ひょっとしたら、身近にいる誰かの顔が浮かぶのではないでしょうか。

前回の記事では、「ストロング系チューハイ」を飲みすぎてしまう男性のケースをご紹介しました。
今回の記事では、ある若い女性のケースから、発達障害などからくる「生きづらさ」と、アルコール問題の関わりを考えます。

地方出身女子がハマったマッチングアプリ詐欺とストロング系チューハイの罠

写真:PIXTA
写真:PIXTA

●20 代女性・Dさんのケース

 地方出身のDさんは、外見は整っているものの、常に自分に自信がありません。人付き合いに強い苦手意識があり、自分から活発に人と関わることはできませんでした。話し方も平たんで感情を伴わない感じで、今で言う「コミュ障」というタイプです。
 しかし子どもの頃から閉鎖的な田舎の生活が嫌で、とにかく東京に出たいという気持ちが強かったため、専門学校で歯科衛生士の資格を取得し、東京の歯科医院の就職先を見つけました。親の反対を押し切って上京し、念願の一人暮らしを始めたのです。
 
 仕事は淡々とこなし、休日は、一人で話題のスポットへ出かけては、自撮りをして画像をSNSにアップしていました。「いいね」をもらえることが嬉しかったので、四六時中スマホを手放せず、SNSを見ることに一日の大半を費やしていました。
 SNSは、Dさんにとっては大事な自己表現の場であり、人間関係をうまく築けない現実からの逃げ場にもなっていたのでしょう。
 
 歯科医師との結婚を望んでいたDさんは、職場で積極的に出会いを求めるのではなく、ひっそりと婚活サイトに登録をしました。彼女にとっては、そのほうが気楽だったからです。
 すぐに都内の病院に勤めているという男性医師と知り合い、サイト上でメッセージのやりとりをした後で、実際に会うことになりました。相手は話し上手で楽しい人だったので、Dさんは好意を持ち、その後も何度かデートを重ねました。
 ところが、数回会った後に、彼から、友人の借金の保証人になって負債を負うことになってしまったと言われ、お金を貸して欲しいと頼まれました。Dさんは友人思いの優しい人だと感激してお金を数十万円貸したのですが、その後、彼とは連絡が取れなくなりました。詐欺に遭ってしまったのです。結局、騙されてお金は戻ってきませんでした。
 
 Dさんは、親にも言えず、東京で相談できる友人もいなかったため、余計に自信をなくしてふさぎ込んでしまい、夜もあまり眠れなくなってしまいました。酔っぱらえば眠れるのではないかと、アルコール度数の低い甘い缶チューハイ1本から飲み始めました。毎晩仕事帰りにコンビニに寄って酒を買ううち、だんだん強い酒を飲むようになり、ストロング系チューハイに行き着きました。その頃には、毎日飲まずにはいられなくなっていたのです。
 
 そのうちDさんは、酒のにおいをさせて出勤するようになりました。顔はむくみ、目が充血しています。遅刻や欠勤も増えてきたため、先輩が気づいて指摘したところ、「実はお酒の量が増えてきて、やめられなくなってきています。このままだと皆さんに迷惑をかけるので退職させてください」と言って、職場を辞めてしまいました。

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斉藤章佳

さいとう・あきよし
精神保健福祉士・社会福祉士。大森榎本クリニック精神保健福祉部長。
1979年生まれ。大学卒業後、アジア最大規模といわれる依存症施設である榎本クリニックにソーシャルワーカーとして、アルコール依存症を中心にギャンブル、薬物、摂食障害、性犯罪、児童虐待、DV、クレプトマニアなどあらゆるアディクション問題に携わる。その後、2016年から現職。専門は加害者臨床で「性犯罪者の地域トリートメント」に関する実践、研究、啓発活動を行っている。また、小中学校での薬物乱用防止教室、大学や専門学校では早期の依存症教育にも積極的に取り組んでおり、全国での講演も含めその活動は幅広く、マスコミでもたびたび取り上げられている。著書に『性依存症の治療』『性依存症のリアル』『男が痴漢になる理由』『万引き依存症』『「小児性愛」という病——それは、愛ではない』がある。

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