2021.9.29
2000万超えの借金を背負った作家・借金玉さんが「100万円でチョウザメを買う」理由
その使い道から見えてくるのは、それぞれ異なる「お金や人生についての価値観や哲学」。誰しも関心があり、生きていくには絶対に必要だけど、それに囚われすぎても幸せな人生とはいえない――そんな不思議な存在、「お金」に迫ります。
前回は、ニューレディーでコラムニストの肉乃小路ニクヨさんが、100万円の使い道を通して、お金が好きな理由や、お金との幸せな付き合い方について語ってくださいました。
今回は、著書『発達障害サバイバルガイド』などで知られる作家で会社経営者の借金玉さんが登場。そのペンネームの通り、数千万もの借金を背負った経験を持つ借金玉さんは、100万円をどのように使うのでしょうか。
(構成・文/「よみタイ」編集部)
カラスミ作りを極めた男が次に目指すもの
今100万円を使うなら、チョウザメを買います。キャビアとなる卵を産む淡水魚です。
日本では、宮崎でチョウザメの養殖が行われているのですが、そこから選りすぐりのチョウザメを仕入れて、自分が本当においしいと思う究極のキャビアを自作したいです。
知ってくださっている方もいるかもしれませんが、僕はこの8年くらいずっとカラスミ作りをしています。最初は完全な趣味でしたが、試行錯誤を繰り返して、完成品を友達に配ったりしているうちに評判になり、料理イベントに呼ばれたり記事を書いたりするようになりました。
今、「カラスミ 作り方」とGoogle検索してトップに出てくるのは僕が書いた「美味しいカラスミの作り方」という記事です。
カラスミ作りにはすでに100万円くらい投資していると思います。
まず、カラスミの原料となる “ボラ子”(ボラの卵巣)は、良いものだと市場で1キロ5万円くらい。思い切って高級品を仕入れたのに、裏面が千切れた使いものにならないボラ子を摑まされたこともあります。掴まされるほうが悪いというのが市場の掟で、これも経験です。塩抜き(酒漬け)に使う酒も、「魔王」とか「獺祭」とか高級酒を使って色々試しまくりました。その結果、安いウォッカの水割りに、ちょっとした秘密の調合を施すのが一番おいしいという結論にたどり着いたのですが、それも様々な可能性を試したからこそわかったことです。他にも塩の種類とか、真空パックの方法とか、お金と時間を使ってやってみなければわからないことが山ほどあって、それを一つひとつ潰していったことで、自分で本当においしいと思えるカラスミレシピに辿りつきました。
それを今度はキャビアでやりたいのです。
どんなさばき方や塩漬けをすればおいしいキャビアが作れるのか、あらゆる可能性を試してみたいです。
普通のキャビアを作ってもつまらないので、一番やってみたいのは“干しキャビア”。ほとんどの食材は水分を飛ばして凝縮するとおいしくなるのですが、イクラは干してもおいしくなりませんでした。でも魚卵が干すのに向かないのかというとそうでもなくて、カラスミも干せばおいしいし、タラコも干したり焼いたりするとおいしいですよね。じゃあキャビアも干したらおいしくなる可能性があるのではないか!? と、期待と興味が膨らんでいます。