2020.3.20
有名私大を出て就活で負けた男がすがる「ストロングな時間」
●20代男性・Eさんのケース
都内の有名私大の理系学部を卒業したEさんは、「ゆとり」などと揶揄される平成世代ではありますが、中高一貫の進学校から名門私立大学に現役合格。その4年後に、自分がまさか就活で1社からも内定がもらえないとは、想像もしていませんでした。
同級生たちが名だたる有名メーカーに就職を決めていく中、Eさんはなぜか面接試験の段階で必ず落とされます。面接中に、大学での研究内容や志望分野以外の話を振られると何を答えてよいのかわからず、黙りこくってしまうのが原因でした。
事前に準備してきた内容は話すことができるのですが、それを遮られたり、別の話題に切り替えられたりしてしまうと、頭の中がパニックになってしまうのです。それを避けたいがために、相手の質問を無視して話し続けてしまうこともありました。
Eさんは内定が出ない自分を恥じて誰にも相談できず、就職先が決まらないまま卒業しました。
世間体を気にする両親と衝突し、都内に実家があるにもかかわらず一人暮らしを始めたEさん。家賃などを稼ぐためにエンジニア派遣の会社に登録しましたが、派遣先での人間関係や、膨大な業務量にすぐに嫌気がさして辞めてしまいました。心配した母親が時折お金を振り込んでくれることもあり、現在は週単位で仕事を入れられる日雇いのアルバイトで生計を立てています。
「ストロングゼロ文学」と承認欲求
親しく連絡を取り合う友人のいないEさんは、Twitter で日々の鬱憤や愚痴を書き連ねるようになりました。そこで出会ったのが「ストロングゼロ文学」です。これまでほとんどお酒を飲まずに生きてきたEさんですが、フォロワーたちの大喜利のようなやりとりに親近感を覚え、自身も仕事帰りにコンビニで買ったお酒を飲みながらツイートするようになりました。
お酒に絡めて自身の境遇を自虐を交えてツイートしていると、たまに思わぬ数の「いいね」がついたり、ユーモアで切り返してくれるフォロワーが現れたりと、SNSの空間ならではの出会いがあります。
最初は350㎖缶を飲み切る前に酔っぱらってしまいましたが、確かに気分がぱあっと晴れるような感覚があり、日々、日常会話を交わす相手もいないEさんにとって、気がつくとその時間が唯一の癒しになっていました。
ネット上ではあっても、酔っているときの自分は普段より愉快で、人から面白いと思ってもらえる人間なのだ、という達成感や優越感のようなものがあるのです。気分がよくなると2缶目に手が伸び、明け方近くまでスマホをいじりながら飲み続けてしまい、起きられずにアルバイトを無断欠勤することも増えてきました。