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あなたの飲み方、大丈夫? 安く、飲みやすく、簡単に酔える、アルコール度数9%以上の「ストロング系チューハイ」の登場によって、お酒の問題を抱える人が増えています。 精神保健福祉士・社会福祉士である斉藤章佳が、酒飲みにやさしい国・日本のアルコール問題をさまざまな視点から考える『しくじらない飲み方 酒に逃げずに生きるには』(集英社)。 書籍の内容を一部変更して、お酒を飲みすぎてしまう人たちのケースを全6回にわたり紹介します。 ひょっとしたら、身近にいる誰かの顔が浮かぶのではないでしょうか。 前回の記事では、定年退職後の男性が抱えがちなアルコール問題をご紹介しました。 今回は、若年層からも支持を受ける「ストロング系チューハイ」を飲みすぎてしまう男性のケースです。

有名私大を出て就活で負けた男がすがる「ストロングな時間」

写真:PIXTA
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●20代男性・Eさんのケース

 都内の有名私大の理系学部を卒業したEさんは、「ゆとり」などと揶揄やゆされる平成世代ではありますが、中高一貫の進学校から名門私立大学に現役合格。その4年後に、自分がまさか就活で1社からも内定がもらえないとは、想像もしていませんでした。
 同級生たちが名だたる有名メーカーに就職を決めていく中、Eさんはなぜか面接試験の段階で必ず落とされます。面接中に、大学での研究内容や志望分野以外の話を振られると何を答えてよいのかわからず、黙りこくってしまうのが原因でした。
 事前に準備してきた内容は話すことができるのですが、それを遮られたり、別の話題に切り替えられたりしてしまうと、頭の中がパニックになってしまうのです。それを避けたいがために、相手の質問を無視して話し続けてしまうこともありました。
 Eさんは内定が出ない自分を恥じて誰にも相談できず、就職先が決まらないまま卒業しました。
 世間体を気にする両親と衝突し、都内に実家があるにもかかわらず一人暮らしを始めたEさん。家賃などを稼ぐためにエンジニア派遣の会社に登録しましたが、派遣先での人間関係や、膨大な業務量にすぐに嫌気がさして辞めてしまいました。心配した母親が時折お金を振り込んでくれることもあり、現在は週単位で仕事を入れられる日雇いのアルバイトで生計を立てています。

「ストロングゼロ文学」と承認欲求

 親しく連絡を取り合う友人のいないEさんは、Twitter で日々の鬱憤や愚痴を書き連ねるようになりました。そこで出会ったのが「ストロングゼロ文学」です。これまでほとんどお酒を飲まずに生きてきたEさんですが、フォロワーたちの大喜利おおぎりのようなやりとりに親近感を覚え、自身も仕事帰りにコンビニで買ったお酒を飲みながらツイートするようになりました。
 お酒に絡めて自身の境遇を自虐を交えてツイートしていると、たまに思わぬ数の「いいね」がついたり、ユーモアで切り返してくれるフォロワーが現れたりと、SNSの空間ならではの出会いがあります。
 
 最初は350㎖缶を飲み切る前に酔っぱらってしまいましたが、確かに気分がぱあっと晴れるような感覚があり、日々、日常会話を交わす相手もいないEさんにとって、気がつくとその時間が唯一の癒しになっていました。
 ネット上ではあっても、酔っているときの自分は普段より愉快で、人から面白いと思ってもらえる人間なのだ、という達成感や優越感のようなものがあるのです。気分がよくなると2缶目に手が伸び、明け方近くまでスマホをいじりながら飲み続けてしまい、起きられずにアルバイトを無断欠勤することも増えてきました。

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新刊紹介

斉藤章佳

さいとう・あきよし
精神保健福祉士・社会福祉士。大森榎本クリニック精神保健福祉部長。
1979年生まれ。大学卒業後、アジア最大規模といわれる依存症施設である榎本クリニックにソーシャルワーカーとして、アルコール依存症を中心にギャンブル、薬物、摂食障害、性犯罪、児童虐待、DV、クレプトマニアなどあらゆるアディクション問題に携わる。その後、2016年から現職。専門は加害者臨床で「性犯罪者の地域トリートメント」に関する実践、研究、啓発活動を行っている。また、小中学校での薬物乱用防止教室、大学や専門学校では早期の依存症教育にも積極的に取り組んでおり、全国での講演も含めその活動は幅広く、マスコミでもたびたび取り上げられている。著書に『性依存症の治療』『性依存症のリアル』『男が痴漢になる理由』『万引き依存症』『「小児性愛」という病——それは、愛ではない』がある。

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