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有名私大を出て就活で負けた男がすがる「ストロングな時間」

 こちらのケースは、社会適応上の問題がアルコール問題へと移行していったわかりやすい例と言えるでしょう。発達障害の中でも、特にアスペルガー症候群に多く見られるコミュニケーション面でのつまずきが、飲酒のきっかけとなっていった事例です。
 Eさんの場合、勉強ができたために見過ごされてきた、融通のきかなさや空気の読めない発言、対人関係をうまく築けないことなどが、就職活動の失敗によって初めて顕在化したのです。

 黒ずくめのスーツが象徴するように、日本の就職活動の場合、皆と同じように振る舞いつつ、その中で自分の個性や強みを際立たせるという高度なコミュニケーション能力が要求されます。
 Eさんの特性を理解した上で、能力さえあれば多少の凹凸おうとつを許容してくれるような職場にアピールできればよかったのかもしれませんが、ゼミ生や担当の教授とのよい関係を築けていなかったため、それもできませんでした。
 私立の進学校でずっと成績がずば抜けてよかったEさんは、これまで「コミュ障」である、ということが直接的な問題になることがなかったのです。おそらく、両親も息子のそうした側面を知りつつも、あまり重要視してこなかったのではないでしょうか。 
 
 Eさんの現時点での飲酒量自体は多くはありませんが、「毎晩飲む」「孤独やストレスを紛らわすために飲む」「予定していた仕事に行けなくなっている」という点で、すでに問題のある飲酒習慣と言えるでしょう。

(編集協力:西野風代)

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斉藤章佳

さいとう・あきよし
精神保健福祉士・社会福祉士。大森榎本クリニック精神保健福祉部長。
1979年生まれ。大学卒業後、アジア最大規模といわれる依存症施設である榎本クリニックにソーシャルワーカーとして、アルコール依存症を中心にギャンブル、薬物、摂食障害、性犯罪、児童虐待、DV、クレプトマニアなどあらゆるアディクション問題に携わる。その後、2016年から現職。専門は加害者臨床で「性犯罪者の地域トリートメント」に関する実践、研究、啓発活動を行っている。また、小中学校での薬物乱用防止教室、大学や専門学校では早期の依存症教育にも積極的に取り組んでおり、全国での講演も含めその活動は幅広く、マスコミでもたびたび取り上げられている。著書に『性依存症の治療』『性依存症のリアル』『男が痴漢になる理由』『万引き依存症』『「小児性愛」という病——それは、愛ではない』がある。

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