2021.9.19
だれがなんと言おうと、わたしたちのおしゃべりには価値がある——少年アヤさんが読む『沼の中で不惑を迎えます。』
わたしたちのおしゃべりは、ほとんど価値のないものとされがちです。まるで感情や人生そのものに価値がないとでもいうように。そしてそれは、エッセイという表現が、なんだかいつまでも軽んじられていることと、けっして無関係ではないと思います。
だけど、もし本当に価値がないのだとしたら、なぜこうも口を塞ごうとする人たちがいるのでしょうか。価値がないと、思い知らせようとする人たちがいるのでしょうか。
わたしたちは、それらの力に屈して、おしゃべりをやめるべきでしょうか? あるいは、書くことをやめるべきでしょうか? ぼくはそうは思いません。けっして思いません。
あなたはどうですか?
本書は、エッセイから引退するつもりだったという著者が、豊かな語彙や表現力、あらゆるタッチやフォーマットの限りを尽くして描いた、彼女と彼女の担当氏によるおしゃべりの記録であり、尊ぶべき人生の記録である。人の人生にとやかく口を出す人々や、マイノリティであることによって生じるややこしさ、それらを内包する社会の歪みを、ぱっと蹴散らす軽快さと熱量に満ちている。
この熱につられて、あなたもぼくのように、つい自分の話なんてしてしまえばいいと思うし、ひとりでくるしんでいる人がいるとすれば、本書はきっと、語り出すきっかけを与えてくれるだろう。そういう力を秘めた本だ。
だれがなんと言おうと、わたしたちのおしゃべりには価値がある。はたから見たら意味のない会話にだって、それぞれの人生が宿っている。思えばいつだって、わたしたちはそれを見据えてきたではないか。
だから、ツイートでもいい、LINEでもいい、ラップでもいい、紙の上でもいい。ひとまずはひとりごとでもいい。しゃべりつづけよう。朝から昼に、そして超早朝に流れ着いてもまだしゃべりつづけている、「はや朝」のお三方みたいに。わかんない人たちのことは、もう置いていけばいいのだから。
それにしてもみんな、元気かな。そろそろ顔が見たいよ。
●第2回 推しにたくさん幸せをもらったから、推しにも幸せになってほしい ——森三中・黒沢かずこさんインタビュー
●第3回 だれがなんと言おうと、わたしたちのおしゃべりには価値がある——少年アヤさんが読む『沼の中で不惑を迎えます。』
●第4回 何でもないような事は幸せだったのか——武田砂鉄さんが読む『沼の中で不惑を迎えます。』
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人生の半分以上、沼にはまり続けて20年。
アラフォー、独身、実家暮らしの漫画家・竹内佐千子さんが、輝かない日常を綴るコミックエッセイ。
不惑を迎えるはずの身にふりかかる、推しの結婚、お金や健康問題、親の介護や自身の老後への不安……。
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