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バンプ、鬼滅、ハロプロ、星野源…僧侶が激推し! 仏教を感じるエンタメ作品はこれだ!

星野源『うちで踊ろう』に“修行”を感じる

星野源さんが紅白歌合戦で披露した『うちで踊ろう』は、昨年のすべてのクリエイティブのなかで、僕が一番感動したものです。
紅白で新しく2番がつけられたのですが、その歌詞があまりにもよくて、正月からずっとリピートしていました。

飯を作ろう ひとり作ろう
風呂を磨いて ただ浸かろう
――2020年NHK紅白歌合戦で披露された『うちで踊ろう』より 作詞・作曲:星野源 

至極当たり前のことを歌っているのですが、「そうか、これだったんだ!」と、頭の中のブッダ(仏性)に電気が走った気持ちがしました。

新型コロナウイルスは現在進行形で世界中に悲しみをもたらしていますが、しかし自然災害などと異なっているのは、悲しみよりもたくさんの「怒り」をもたらしている点です。
悲しみの感情は過去に向いた矢印であるのに対し、怒りは未来に向けられた矢印です。
さらに、悲しみは抽象的な感情であるのに対し、怒りは具体的な感情です。

もちろん、その怒りがしかるべき不正を正す方向に向かえばいいのですが、多くの場合がエネルギーそのままに暴発し、協力し合えるはずの人達と傷つけ合うという事態をたくさん生んできたように思います。

暴発した未来志向の具体的な感情に対して、エンタメ作品はなかなか影響を及ぼすことができません。
実際にコロナ禍では、演劇やライブなどの表現行為自体が「そんなことしている場合じゃない」と軽んじられ、忌避される場面も多く見聞きしました。
過去の大きな震災では、歌が人々の力になっていたのとは対照的だと僕は思いました。

クリエイティブがこの時代にできることはなんなのでしょうか。
僕自身も作家の端くれとして、僧侶の端くれとして、無気力なまま2020年を明かそうとしていました。
そんな2020年の最後に、星野源が歌っていたのは、至極当たり前で、とても具体的な「生活」でした。

飯をつくる。風呂を掃除する。ゆっくり浸かる。

それは仏教がずっと戦ってきた感情に対して、処方していた在り方そのものでした。
苦しみを生む原因になる三大煩悩の一つ、怒り(しん)。
そして、仏教で大事なのは修行、それは生活そのものです。掃除、食事、風呂。そのすべてがお経として収録されていたりもします。

星野源が2020年という「病」の時代の幕切れに教えてくれたのは、2500年前から尊ばれてきた智慧ちえだったんだと思いました。
何よりも「生活」が星野源の大切にしてきた概念であることはもっと語りたいのですが、ここではもう文字数が足りません。
少なくとも、紅白で披露された歌詞の最後の「僕らずっと独りだと諦め進もう」の言葉に、ブッダと近い諦観を感じたのは僕だけではないはずです。

星野源さん、大事なことを教えてくれてありがとうございます!

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稲田ズイキ

いなだ・ずいき●僧侶。1992年京都の月仲山称名寺生まれで現・副住職。同志社大学を卒業、同大学院法学研究科を中退、その後デジタルエージェンシー企業インフォバーンに入社。2018年に独立し、寺に定住せず煩悩タップリな企画をやる「煩悩クリエイター」として活動中。コラム連載など、文筆業のかたわら、お寺ミュージカル映画祭「テ・ラ・ランド」や失恋浄化バー「失恋供養」、煩悩浄化トークイベント「煩悩ナイト」などリアルイベントを企画しています。フリースタイルな僧侶たちWeb編集長。Twitter @andymizuki
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