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バンプ、鬼滅、ハロプロ、星野源…僧侶が激推し! 仏教を感じるエンタメ作品はこれだ!

モーニング娘。『I WISH』に“一切皆苦”を感じる

僕は小学生の頃から現在進行系でハロプロが好きなのですが、何度聞いても自動的に涙が流れてしまう曲が何曲かあります。
そのうちの一つが『I WISH』です。

文句なしに良い曲ってのは置いといて、この曲にはつんく♂さんの歌詞の特徴的なエッセンスがすべて現れているなと思うのです。
それが

晴れの日があるから 
そのうち雨も降る
全ていつか納得できるさ!
――『I WISH』 モーニング娘。 作詞・作曲:つんく

です。

子供ながらにこのフレーズは「この曲、僕らのことが分かっている!!!!」と一瞬で宝物になりました。
一般的な曲ならば「雨が降っててもいつか晴れる」「雨のち晴れ」を歌うところ、その逆を歌っているんです。
そして、「全ていつか納得できるさ!」とつなげています。
ここで歌われているのは、希望でもなく、展望でもなく、諦めです。それも、とことん明るいポジティブな諦め。

そんな良きも悪きも含めて、その後のサビで「人生ってすばらしい」と歌っているんです。
そして、タイトルが『I WISH』と祈ってるもんで、これにはもう「ブッダじゃん」としか言いようがありません。

あらゆるものから“幸せ”は見つけられる!(イメージ画像/写真AC)
あらゆるものから“幸せ”は見つけられる!(イメージ画像/写真AC)

人生は思い通りにならない。そんなことが仏教では「一切皆苦」という言葉で語られます。
どうあがいても雨は降ってしまいます。そんな不条理に心を乱されず、どうしたら楽しく生きられるか。
仏道とは『I WISH』が歌うようなポジティブな諦めそのものだと思います。

笑うだけではなく泣くことすらも幸せだと思える感性は、仏教でいう「無分別」という境地にあります。
あらゆるものを分別せず、ただそれがあることの有り難さを噛みしめる、そんな捉え方です。
幸せも苦しみもすべて含めて「人生ってすばらしい!」と祈るように歌っている『I WISH』は、もはや僧侶でいう読経という行為そのものだと思います。

さらに、つんく♂さんの楽曲には、『青春小僧が泣いている』『時空を超え 宇宙を超え』『The Vision』など、僕がひっそりと「悟り系EDM」と呼んでいるシリーズがあります。
その歌詞は現実世界を超え、仏の世界、仏の目線を描いているんじゃないかと思うほど、壮大な世界観が広がっていて、もっともっと語りたいことがあるのですが、それはまたいつか書きたいと思います。
とにかく、つんく♂さんは野生のブッダ。

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稲田ズイキ

いなだ・ずいき●僧侶。1992年京都の月仲山称名寺生まれで現・副住職。同志社大学を卒業、同大学院法学研究科を中退、その後デジタルエージェンシー企業インフォバーンに入社。2018年に独立し、寺に定住せず煩悩タップリな企画をやる「煩悩クリエイター」として活動中。コラム連載など、文筆業のかたわら、お寺ミュージカル映画祭「テ・ラ・ランド」や失恋浄化バー「失恋供養」、煩悩浄化トークイベント「煩悩ナイト」などリアルイベントを企画しています。フリースタイルな僧侶たちWeb編集長。Twitter @andymizuki
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