2024.4.16
【ティモンディ前田裕太×佐々木亮 特別対談/前編】 それぞれがハマったNetflix版『三体』の魅力。ハイレベルな映像化が宇宙への興味の扉を開く!
今回、作品ファンであり、その魅力を発信し続けているティモンディ前田裕太さんと、よみタイ連載では宇宙研究者としての視点から作品の魅力を解説した佐々木亮さんの対談が実現。Netflix版の見どころ、原作との違いなどそれぞれの視点から楽しく語ります!
(※2p目ではネタバレを含みます。ご注意ください)
撮影/上澤友香
取材・文/澤田真幸
『三体』にハマって、宇宙にも興味を持つように
――前田さんは「佐々木亮の宇宙ばなし」のリスナーだと伺いました。どういったきっかけで聴き始めるようになったのですか?
前田 ポッドキャストを聴くのが好きでいろいろな番組をチェックしているのですが、「宇宙ばなし」は第一印象で「あ、これは面白いな」と思って、それ以来ずっと聴いています。
佐々木 めちゃくちゃうれしいです! ラジオ番組(「橋本直と鈴木真海子のCROSSPOD」)でもご紹介いただいたことがあって、そのときも「えっ、本当に? 本当に?」と半信半疑でした(笑)。
前田 自分が知らない分野のトピックを噛み砕いてお話してくれるのですごく分かりやすいですし、宇宙にそこまで関心がない人でも興味が持てるような、それこそ「宇宙人はいるのか?」みたいな話題もあって、知的好奇心がくすぐられるポッドキャストですよね。
佐々木 ありがとうございます! 前田さんが宇宙に興味を持ったきっかけだったり、出来事は何かあるんですか?
前田 やっぱり小説版『三体』にがっつりハマったのが大きいです。アメリカのオバマ元大統領が大ファンで、「『三体』があったからホワイトハウスでの過酷な日々も耐え抜くことができた」と言っているのを知って読み始めたのですが、とにかく科学や宇宙に関する描写が面白くて。それまで天文学に対しては星の大きさや成分などを知るための学問程度にしか思ってなくて、どこか遠い世界のことだったけれど、『三体』を読んだ後は「自分たちの星に住めなくなるとしたらどこの星に移住するのがいいのかな?」「木星は違うよな」「やっぱり火星かな」みたいな感じで、今までは明らかに違う視点で宇宙のことを考えるようになりましたね。
佐々木 前向きな星の探し方じゃなくて、逃げ場所探しみたいですけど、人間は危機感を持ったほうが必死になるので、宇宙の捉え方は確かに変わるかもしれないですね。
――前田さんは小説版の翻訳を手掛けた大森望さんと対談したり、いろいろなところで『三体』の面白さについてお話しされていますよね。そこまでハマった理由は何ですか?
前田 『三体』は3部作で、それぞれ違ったSFのいいところがあるんですよね。1部は歴史を絡めた少し難しい部分があるのですが、サスペンス要素もあって、読み終えたときに「これを超える作品はあるのか?」と思ったんです。そうしたら、2部はSF要素がさらに濃くなって、バトルシーンもあり、これでもかと言うくらいエンターテイメント性が増していた。「ここまで壮大な世界を描いて、こんなにきれいに終わったのだから、次はもうないだろう」と思ったら、3部はまたそれを超えていくんです(笑)。3部はさすがにもうこれ以上広がらないでしょうというくらいのスケールをもって終わるので、読み終わった後は虚無感がすさまじくて、なかなか現実に戻って来られませんでした。誰も想像できない展開が繰り広げられ、ここまで面白いものを人間が生み出せるんだって思いますね。
佐々木 わかります。僕自身、SFを好きになったのは研究を始めてからで。現実の理論を想像以上に正確に書いていることを実感できるようになってから、より楽しめるようになったんです。『三体』は宇宙の描写がちゃんと現実の理論にのっとったものになっていて「著者はここまで理解して書いているんだ」という感動もありました。その点でも面白いんですよね。