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コーダに会いたくて毎日シクシク…。人と犬が一緒に学ぶってなんだろう【サーフィン犬 コーダが教えてくれたこと 第3回】

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コーダと離れ離れになって気づいた、自分が本当に望むこと

トレーナー研修中は、研修の厳しさも相まって、コーダに会いたくて毎日トイレで泣いていた
トレーナー研修中は、研修の厳しさも相まって、コーダに会いたくて毎日トイレで泣いていた

 私がトレーナー研修に行っている間、コーダは家族とお留守番。初めて長い期間離れ離れになりました。それまでぬくぬくと生活していた私には、早朝から深夜まで動きっぱなしで体力的にも精神的にも過酷でした。そのせいか、何十日も経ったわけでもないのにコーダシックに陥り、大人なのにトイレで毎日シクシク泣いていました。もしこのままAFCで住み込みの見習いを続けたら、超一流のドッグトレーナーになれたかもしれないのですが、私には、コーダを留守番させたまま他の犬のお世話をしたり、全ての時間を捧げて集中することがどうしてもできませんでした。ドッグトレーナーになりたい私のために、コーダに犠牲になって欲しいわけじゃない。私の望みは、コーダと不自由なく普通に生活して、休日は一緒に色々な場所に遊びに行って、楽しく仲良く暮らしたいということだけだったのです。

 そう、私の望みはコーダともっと仲良くなるためにドッグトレーニングの知識を身につけること――ということで、AFCでの宿泊研修プログラムが終了した後、テリー先生が関わっているもう一つの団体、日本動物病院協会(JAHA)のインストラクター養成講座を受講してみることにしました。 JAHAのインストラクター養成コースでは、「犬を直接訓練するのではなく、飼い主にしつけやトレーニングを教える指導者として必要な知識とスキルを学びます」と説明がありました。授業は講義と実技があるのですが、ただ受講すれば進んでいける、というものではなく、講義を受講する前に満たしておかなければならない条件や合格しなければならない試験などがあり、修了するまでかなりの時間と努力を要するものでした。最後に筆記と実技試験、面接を受けて合格すれば認定のインストラクターになれるという仕組みですが、その認定には、並行してJAHA認定インストラクターが指導しているスクールに通う必要もあったため、そのスクールにも通いました。そうこうする中で、他の団体にも興味が出てきてJAHA以外のモチベーショナル・トレーニングを実践しているスクールもいくつか体験してみました。そんな調子で3年くらいあちこち奔走していましたが、組織やグループに属することが苦手な性分のせいか、だんだん団体に所属するための学びにモチベーションを感じづらくなってきてしまったため、思い切ってJAHAの認定取得を目指すことはやめました。なので、私は現在もインストラクター養成講座のプログラムのみ修了というステータスですが、それは後に、ドッグトレーニングを飼い主に指導するインストラクターとしてのスキルアップに活きることになりました。犬の基礎知識、学習理論、行動の問題対処、動物行動心理学、仔犬の飼育知識、ハンドリングやトレーニングの知識、犬具の扱い、レッスンの運営方法、カウンセリングスキルなどを講義で、そしてインストラクション全般は、実際に犬を扱いながらの合宿キャンプなどの実技で。JAHAのプログラムが終了した後も、いくつか気になるスクールを受講したりコーダと日々切磋琢磨したりとしているうちに、いつの間にかコーダの行動にまつわるすべての問題は「そんなことあったっけ?」というくらいになり、コーダは私の良きパートナーになってくれていたのです。

【ドッグトレーナー浅野のWANコラム-3-】

ドッグトレーナーになるために必要な資格とは?

 実は、ドッグトレーナーになるために必要な資格はありません。つまり誰でもドッグトレーナーになることは可能なのですが、ドッグスクールなど、ドッグトレーニング業として開業するためには、保健所の発行する動物取扱業責任者「訓練」の資格を取得することが必要で、そのためには、①獣医師や愛玩動物看護師免許を取得していること、②「訓練」に関する知識・技術を1年以上教育する学校、もしくはその他の教育機関を卒業していること、③適切な資格を証明する試験に合格していることのいずれかの条件を満たす必要があることに加えて、半年以上の実務経験(常勤として)があることになります。
 私は、動物系専門学校出身ではなく、会社員からドッグトレーナーになりましたので、試験合格・資格取得・実務経験(出張トレーニング)で「訓練」の要件を満たしました。第1種動物取扱業の資格要件の一覧にある中の「愛玩動物飼養管理士1級」「GCT認定」「JAHAインストラクター養成講座修了」を取得しています。(※参考:資格要件一覧はこちらこちら
 とはいえ、プロのドッグトレーナーになることは、世の中の他の仕事と同じく、ただ資格を持っているだけでは難しいと思います。犬の性格に合ったトレーニング法をそれぞれ見極めて、それを飼い主と犬に分かりやすく伝えるコミュニケーション力に加えて、犬に関わる知識全般、社会での一般常識、倫理観など、犬と飼い主が進む方向を正しく明るい方へ導き幸せに生きるためのサポートをするために、独りよがりではなく人間としても成長する必要があります。また、ドッグトレーニングは日進月歩で常に進化するものなので、古いやり方に囚われず常に新しい情報に目を向け学び続けることも大切です。
 ドッグトレーナーのひと言が誰かの人生と犬生を変えるかもしれないことを常に念頭において理念を持ってやるべき、とてもやりがいのある仕事です。

次回、連載第4回は12/17(水)公開予定です

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浅野里実

あさの・さとみ
ドッグトレーニングインストラクター/一級愛玩動物飼養管理士/一般社団法人ケーナインスケートボーディング協会代表理事。コーダとの出会いをきっかけに30歳でドッグトレーナーを志し、2019年より千葉県習志野にドッグスクール『Perrito』を主宰。「動物福祉」の考え方に基づき、飼い主の知識向上による動物のQOLをサポートし続けている。
パートナー犬のコーダと共に世界を舞台に活動し、2024年2月、イタリア・ミラノのTV番組内にて「世界最長の人間トンネルをスケートボードで通過する犬」でギネス世界記録を達成。同年8月、アメリカ・サンフランシスコで開催されたドッグサーフィン世界大会で銀メダル獲得。同大会のオンラインコンテストでは金メダル3枚を獲得するなど、入賞歴は累計17回を超える。

Instagram :@coda_satomimomi

Coda

コーダ
2011年10月30日生まれ。生後2か月から浅野さんと暮らす、海が大好きなイングリッシュコッカ―スパニエル(♂)。サーフィン、スケートボード、キックスケーター、スノーボードを乗りこなす。

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