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南和行「離婚さんいらっしゃい」

私は強い男を求める(下)

photographee.eu/Shutterstock.com
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【ハニ子のその後】

弁護士の提案に対して夫は……

ハニ子は弁護士に、
弁護士が考えたとおりの条件を、
夫に提案してもらった。

ハニ子は弁護士の説明に納得する気もしたが、
半信半疑だった。

なぜここで鋭く刺し込むような提案をしないのか。

しかし弁護士の言ったとおりだった。

夫はこの条件をそのまま受けれ、
離婚届を送ってきて、
ハニ子は夫と協議離婚できた。

弁護士に依頼してから、
3週間のスピード離婚だった。

弁護士の極意……

「いつもこんな形で離婚交渉をしているの?」
とハニ子が聞いたら、
弁護士は「まさか!」と大笑いした。

依頼者の職業や性格の傾向、
それに相手の性格を探りながら、
あの手この手を考えると弁護士は言った。

「勝ち負けを決めても誰も幸せじゃない場合なら、
 全員が少し勝った気分になれるよう、
 うまく人の気持ちを動かさないと」

「ただし、弁護士が再優先するのは、
 依頼者がいちばん望んでいることの実現だけど」

とも弁護士は言った。

組織の中でも法廷でも、
勝ち負けにこだわって生きているハニ子には、
少しわからない世界だった。

弁護士との委任契約では、

「着手から1ヶ月以内で、
 相手が離婚に同意した場合は、
 約定の成功報酬に30%を加算する」

となっていたので、
弁護士報酬は思っていたより割高になったが、
ハニ子は、あっという間に離婚ができて満足だった。

「夫が離婚になかなか同意しなかったら、
 私はたぶん上司の子供をわざと妊娠していたと思う」

とハニ子は別れ際に弁護士に言った。

「弁護士は、依頼者がどんな極悪人であっても、
 その弁護をしなきゃいけないこともあるからね」

と言われた。

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南和行

みなみ・かずゆき●1976年大阪府生まれ。京都大学農学部、同大学院修士課程卒業後、大阪市立大学法科大学院にて法律を学ぶ。2009年弁護士登録(大阪弁護士会、現在まで)。2011年に同性パートナーの弁護士・吉田昌史と結婚式を挙げ、13年に同性愛者であることを公言する同性カップルの弁護士による弁護士事務所「なんもり法律事務所」を大阪・南森町に立ち上げる。一般の民事事件のほか、離婚・男女問題や無戸籍問題など家事事件を多く取り扱う。著書に『同性婚―私たち弁護士夫夫です』(祥伝社新書)、『僕たちのカラフルな毎日―弁護士夫夫の波瀾万丈奮闘記』(産業編集センター)がある。
大阪の下町で法律事務所を営む弁護士の男性カップルを追った、本人とパートナー出演のドキュメンタリー映画『愛と法』が話題。
・なんもり法律事務所
http://www.nanmori-law.jp/
・南和行のTwitter
https://twitter.com/minami_kazuyuki
・吉田昌史のTwitter
https://twitter.com/yossy_nan

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