よみタイ

南和行「離婚さんいらっしゃい」
離婚をめぐるたくさんの悩みやさまざまな葛藤。そこには、夫婦、家族の数だけドラマがある。夫婦関係で悩んでいる人たちが、自分の人生を取り戻せるヒントが得られることを願って……大阪で弁護士として働く著者が架空でつづる離婚をめぐるセミノンフィクション。

私は強い男を求める(下)

【前半のあらすじ】

検察官のハニ子は、
育休明けに復帰した職場の上司と、
不倫関係になった。
同じ検察官である夫は地方で単身赴任中。

ハニ子は夫との離婚交渉を、
司法試験合格同期の離婚弁護士に依頼した。

【ハニ子の夫と弁護士】

(弁護士)
もしもし。
お電話いただいてすみません。
ハニ子さんから依頼を受けた弁護士です。

(夫)
いえ、こちらこそ、
夜しか電話できなくて申し訳ない。

(弁護士)
いえいえ。
弁護士は自営業ですから、
定時上がりは基本ないので。

(夫)
さっそくですが、
ハニ子の代理人としての話っていうのは。

(弁護士)
ハニ子さんから、
離婚をしたいと、率直にそのお願いです。

(夫)
考える余地というか、
選択権はないんでしょうか。

(弁護士)
もちろんこちらとしては、
無理に離婚ができるとは思っていませんので、
旦那さんに離婚を了解してもらえるよう、
条件も整えたいと思っています。

(夫)
本当は、会って話すべきことですよね?

(弁護士)
ご夫婦で会ってということですか?

(夫)
いや、ハニ子とは、
会っても話にならないでしょうが、
弁護士さんと会って話すべきかなと。

(弁護士)
もちろん、今日はご挨拶ですから。

(夫)
離婚を拒否するという回答も、
ありなんですよね?

(弁護士)
それはもちろんですが、
ただ、現実問題として、
離婚しなかった場合、
ハニ子さんも、旦那さんも、
面倒なことになってもいいなら、
というのが弁護士としてのアドバイスですね。

pathdoc/Shutterstock.com
pathdoc/Shutterstock.com

【ハニ子の場合】

弁護士のやり方

ハニ子の弁護士は、
ハニ子の目の前で、
弁護士事務所の会議室から夫に電話した。

離婚にせよ何にせよ、
弁護士が間に入る第一報は、
内容証明郵便とかだろうと思っていたが、
ハニ子の弁護士は、
夫の携帯に自分の携帯から、
ショートメッセージを送った。

「内容証明郵便は、
 送ったことの証拠を残すことに、
 いちばんの意味があるから」

「時間がかかった上に、
 下手に警戒させてもしょうがないでしょ」

と弁護士はこともなげだった。

それにしてもだ。

検察官の仕事上、
口が重い被疑者や被告人に対して、
いかに話させるのか、
そのノウハウはハニ子にもある。

それからすると、
ハニ子の弁護士の夫への電話は、
あまりにも柔らかすぎではないか。

「離婚する気になったら、
 お電話お待ちしています」

と言っているようにすら聞こえた。

ハニ子は、さっき弁護士と結んだ委任契約の、
着手金30万円について、
本当にこれでよかったのか……と、
険しさのかけらもない弁護士の表情に、
苛立いらだちも感じた。

1 2 3

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Twitterアカウント
  • よみタイ公式Facebookアカウント

新刊紹介

よみタイ新着記事

新着をもっと見る

南和行

みなみ・かずゆき●1976年大阪府生まれ。京都大学農学部、同大学院修士課程卒業後、大阪市立大学法科大学院にて法律を学ぶ。2009年弁護士登録(大阪弁護士会、現在まで)。2011年に同性パートナーの弁護士・吉田昌史と結婚式を挙げ、13年に同性愛者であることを公言する同性カップルの弁護士による弁護士事務所「なんもり法律事務所」を大阪・南森町に立ち上げる。一般の民事事件のほか、離婚・男女問題や無戸籍問題など家事事件を多く取り扱う。著書に『同性婚―私たち弁護士夫夫です』(祥伝社新書)、『僕たちのカラフルな毎日―弁護士夫夫の波瀾万丈奮闘記』(産業編集センター)がある。
大阪の下町で法律事務所を営む弁護士の男性カップルを追った、本人とパートナー出演のドキュメンタリー映画『愛と法』が話題。
・なんもり法律事務所
http://www.nanmori-law.jp/
・南和行のTwitter
https://twitter.com/minami_kazuyuki
・吉田昌史のTwitter
https://twitter.com/yossy_nan

週間ランキング 今読まれているホットな記事