よみタイ

鈴木涼美「○○○な女~オンナはそれを我慢している」
よみタイでの大好評連載「アラサー女がそんなことで喜ぶと思うなよ」(書籍好評発売中)を終えた鈴木涼美の次なるフェーズは、オンナ目線の女性論。ふと見渡せば、耳に目につく、いろんなタイプ・○○○な女たち。女の敵は女じゃないけど、ちょっとどうなの、それでいいの、な現代女性像を浮き彫りに。

夢と現実の高低差女〜性格が良いと身体を売る話

日本で女として生きていると割と頻繁に直面する「高収入バイト」問題というのがあって、要するに女子高生だったらJKビジネスとか、JKビジネスという言葉が登場する前のそれに準ずる行為(援交とかブルセラとか)に通じる道はどんな階級の女にも割と開かれているし、女子大生だったらキャバやデリなどで働く友人たちがその辺にごろごろ転がっているし、よっぽど骨格がいいとか美人とかじゃない限り街で声をかけてくるスカウトマンは大体はタレントやモデルではなくAVや風俗だし、日常に溢れるそういった仕事へのアクセスポイントとどう向き合うか、結構な頻度で考えさせられるのだ。

ニッポンにおける女子の高収入バイトは夢と現実の落差を埋める機能を持つ

援助交際ブームっていったって、実際におじさんに何万円か貰ってホテルに一緒に入ったことのある者は当時の女子高生の10%に満たないなんていうことはよく言われることだけど、あんなにも世界に煽られて、アクセスへの罠が張り巡らされている状態では、自分なりの規範を持っていないとちょっとしたきっかけで結構足を踏み入れがちだというのが、足を踏み入れまくった女の私感。
逆に考えると、あんな時代に品行方正なバイトをしてたなんてみんな本当にちゃんとした人間だよなぁと感心すらする。恐らく、みんな自分の未来や手塩にかけて育ててくれた親族の気持ちや愛する彼氏の想いなどなど、やらない理由をちゃんと持っていらしたのでしょう。

不十分とはいえ一応社会保障のあるニッポンでの売春及びそれに準ずる高収入バイトというのが多くの場合、夢と現実の落差を埋める機能を持っている。

自分はただの高校生で、雑誌で紹介されるアユの私物を買うような財力は当然ない、しかし欲しい。
高収入バイトをしたところでアユの財力など天の上だというのは変わらないのだけど、少なくとも同じ靴や同じバッグをいくつか買える。大学生の自分がアルバイトで稼げる金額なんてせいぜい10万ちょっと、ゴシップガールのような生活を夢見たところで、住める家なんて中野区のワンルーム。でも高収入バイトで50万稼げば、なんとなくセレブの真似事ができるマンションくらいは借りられる。

夜業界に堕ちるのは実はいいヤツ?
夜業界に堕ちるのは実はいいヤツ?

高収入バイトに対する世間の目が厳しいのは、確かに他人のアレをアレしてアレを見せたり、カメラの前でアレをアレしてアレになったりすることに対して、魂が汚れるといった類の視線もあるのだけど、半分くらいは、その現実を受け入れずに若干ズルして埋めてる感じが愚直じゃないように思えるんじゃないか。

夢と現実の差を地道に時間をかけて埋めていき、ある程度のところで埋まりきらないその差を受け入れ、私の人生はアユほどに華やかではないけれども、それでも生きるに値するものだと納得するこの過程こそ人生だと考えるならば、確かに身にそぐわないほどのお金がもらえる仕事を飛び道具にして夢のバッグを買うような行為は受け入れがたいズルな訳である。

だがしかし、高収入バイトと言われるような売春およびそれに準ずる行為を伴う仕事というのは、結構しっかり受けた報酬分の困難が降りかかってくるので、実は結構可愛げがあるのだ。

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鈴木涼美

すずき・すずみ●1983年東京都生まれ。作家、社会学者。慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、東京大学大学院学際情報学府の修士課程修了。大学在学中からキャバクラ嬢として働きだし、20歳でAVデビュー、出演作は80本以上に及ぶ。2009年から日本経済新聞社に勤め、記者となるが、2014年に自主退職。女性、恋愛、セックスに関するエッセイやコラムを多数執筆。
公式Twitter → https://twitter.com/suzumixxx

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