2024.8.17
おかずになるかならないか、それが問題だ……から揚げから考える「和食」の定義
日本の「おいしさ」の地域差に迫る短期集中連載。
前回は、日本各地のご当地餃子を考察しました。
今回からは、今や不動の人気メニューとなった「から揚げ」について。
から揚げ編① から揚げは和食なのか
「から揚げ」は和食と言えるのかというのは、なかなか面白いテーマなのではないかと思います。今やから揚げは、日本人にとってなくてはならない料理です。少し前には「から揚げブーム」なんてことも言われていましたし、日本人がから揚げを食べる頻度は、ますます上がっている印象があります。
しかし、昔からそうだったわけではありませんでした。から揚げという調理法が辞書に登場し始めること自体が1900年代以降であり、しかも当時は魚を材料とすることが多かったようです。今や単にから揚げと言うと鶏のから揚げのことを指すのが当然のようになっていますが、それはあくまで現代の話というわけですね。
歴史の浅さはともかくとして、から揚げ、すなわち鶏のから揚げは、から揚げ定食やから揚げ弁当としても今やすっかり日常食となっています。居酒屋では酒のつまみとしても大人気ですし、コンビニのカウンターに置かれるそれはスナック的にも楽しまれています。何なんですかね、この守備範囲の広さは!?
和食を定義することは難しい、というかほぼ不可能ですが、個人的見解としては「少なくともご飯のおかずとして認められたらそれは和食である(十分条件)」と考えています。仮にそれを前提とするならば、から揚げは完全に和食です。ただし一方で、「から揚げはご飯のおかずにならない」と主張する人も一定数います。最近ではこちらの派閥はかなり劣勢に見えますが、どちらかと言うと年配層を中心に、まだまだ根強いようです。この差がどこから生じるのか、というのは、から揚げが和食かどうか以上に面白いテーマだと思っています。そしてこのテーマの謎を解く鍵は、年代差だけではなく地域差にもあるのではないだろうか、と僕は考えています。
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漫画家・西原理恵子さんのご家庭のから揚げが話題になったことがありました。西原家のから揚げは、「醤油・みりん・ニンニク・しょうがをこれでもか‼︎…ってくらい入れてある」のだと言います。そしてそれを15分かけて揉み込むのだ、とも。つまり、濃い味付けが鶏肉の中にまでしっかり染み込むようにして作られる、ということですね。
面白いのはその味付けが、西原さんの出身地である高知の「鯨カツ」の味付けをそのまま使ってある、とも説明されていることです。地域に伝わるローカルな味付けが、1970年代以降急激に普及した鶏肉(ブロイラー)にもそのまま転用された、ということでしょうか。鯨カツもおそらくそうであったように、同じ味付けのから揚げもまた、ご飯のおかずとして何ら違和感のないものとして食卓に登場したのではないかと思います。
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