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小池克臣「No Meat,No Life.を生きる男の肉だらけの日々 肉バカ日誌」
年間200食もの牛肉を食べるという、名実ともに肉バカ、小池克臣が日々蓄えてきた肉への愛、知識、体験……そのすべてを注ぎ込む究極の肉コラムがここに。肉好きはもちろん、そうでなくても知っておくべき肉のあれこれが満載!

第2回 【伝説の名店の遺伝子を受け継ぐ最強の焼肉店3選】

「そんなに焼肉を食べまくって色々知ってるのに、どうして焼肉屋をやらないの?」
今まで数えきれないほどこんな質問をされてきたが、私の答えはいつも一緒。
「食べれば食べるほど、知れば知るほど、焼肉屋の難しさが分かるから出来ない」

焼肉屋を始めるのは簡単だと思っている方は非常に多い。皆口を揃えて「良い肉を仕入れて、ただ切って出せばいいんでしょ!?」と言うのだ。
しかし実際の焼肉屋経営はそんなに甘いわけがない。
まず良い肉を仕入れるのが難しい。最近は牛肉そのものが品薄で、品質の良いものほど恐ろしく値上がっている。また、タンやハラミをはじめとした内臓に分類される部位は、お金ではなく内臓屋との信頼関係がないと品物自体を買うことさえ出来ない。いくらお金を積んでも門前払いされて終わりである。

仕入れた牛肉の管理も難しい。丁寧かつ素早く仕込みをすることで素材のポテンシャルは開花するが、そうでなければ牛肉はサシが溶け出し肉質がダレてきて、あっという間に傷んでくる。また、個体や部位それぞれで肉繊維を見極め、食感を活かすカット法を身につける必要もある。何でもかんでもスライサーにぶち込んでいたら、せっかくの牛肉が台無しである。

極めつけ……タレが猛烈に難しい。試作を行えば行うほど、市販の○バラ焼肉のタレの凄さが身に染みる。タレこそ答えのない難解なパズルなのである。
食べて「あーだ、こーだ」言えても、結局はそれを作り出せないのである。それを実現するためには修行が必要であり、修行によって基本から徹底的に身につけた職人だけが、肉好きを感動させるような至高の焼肉を生み出すことが出来る。
それではどこにそんな職人がいるのか。ここに焼肉界のレジェンドと言える名店で研鑽を積んだ、「焼肉サラブレッド」と呼ぶに相応しい店主が営む焼肉屋を紹介したい。

○赤坂 らいもん

焼肉界最高峰と称される名峰、白金「金竜山」。雪山登頂に例えられるほど見事な霜降りが名物で、カルビ→中カルビ→上カルビ→特上カルビと標高が上がれば上がるほどサシが険しく深くなり、頂上付近の特上ロースのサシはまさにパウダースノーの如し。美しい霜降りであるにもかかわらず、脂のしつこさを一切感じさせないタレが恐ろしくハイレベルだ。
そんな金竜山の娘さん夫婦が2018年7月にオープンさせたのが赤坂の「らいもん」。金竜山のお客さんに告知すればすぐに満席になるのだろうが、若い夫婦はそれを望まない。自分たちの力でじっくりとやっていきたいと言う。
金竜山を彷彿させる独特のカットのタンは肉汁が溢れ、美しい霜降りのカルビは白米を何杯でも頬張りたくなるほど、肉とタレのマリアージュが素晴らしい。
昼は水木金の週3日の営業で、メニューは極上のタンシチューのみ。夜は金竜山の定休日を中心に月に数日。営業日が少ないので、すでに予約困難になりつつあるが、日本一予約が取れない焼肉屋と言われる金竜山に比べれば今のところ予約が取りやすいと言える。

 ●赤坂 らいもん ☎03-3583-7012 
 ●炭焼 金竜山  ☎03-3446-8156

○代官山 焼肉 かねこ

焼肉を突き詰めると最終的にはタレに行き着く。塩だけで違った部位を食べ続けると、違いがわかりにくくなってくる。塩で食べるなら焼肉のような薄切りよりもステーキのような厚切りで食べる方が適しているだろう。一方、技術のないお店のタレは確かに肉の味を消し去るが、名店と呼ばれる焼肉屋のタレは、肉の味をより際立たせてくれる。
個人的に日本一旨い焼肉のタレは浜松町にある「くにもと」であり、そのくにもとで、計8年修行を積んだ本物の職人がオシャレな街・代官山にいる。目立たない路地裏に、たったテーブル4つの小さなお店をオープンしたのが2015年。一緒にくにもとで働いていた奥さんと二人三脚でお店を切り盛りしている。
タレは、くにもとと同じで素材の旨みを引き立て、焼肉というハイレベルな料理に昇華させてくれる。扱う牛肉は田村牛をはじめとした長期肥育の雌牛を中心に但馬血統の個体も入る。木箱に盛られた牛肉がテーブルに運ばれると、思わず感嘆の声が漏れる。この木箱に店主の焼肉に対する想いが詰め込まれているのだ。

○炭火焼肉 ふちおか

一切の手抜きを拒否し、愚直なまでに理想の焼肉を追い求める市谷の「なかはら」。仕入れる牛肉は都内屈指のクオリティ。加えて、手切りにこだわり、部位ごとの繊維を見極めて入れる包丁は究極の域に達している。そんな厳しい店主の元で3年修業した後に経堂で独立したのが「ふちおか」。
なかはら仕込みのこだわりは細部まで行き届き、仕入れる牛肉、部位ごとに変化するカット術も、すでに東京焼肉界の上位に位置する。また、通常の焼肉以外にもメンチカツやヒレカツといった揚げ物も異常に旨い。裏メニューとして存在するガーリックライスの旨さも筆舌に尽くし難い。ぜひ通いまくって店主におねだりしてみてほしい。

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小池克臣

こいけ・かつおみ●1976年、神奈川県横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。焼肉を中心にステーキやすき焼きといった牛肉料理全般を愛し、さらには和牛そのものの生産過程、加工、熟成まで踏み込んだ研究を続ける肉の求道者。著書に『No Meat,No Life.を実践する男が語る和牛の至福 肉バカ。』がある。
公式ブログ「No Meat, No Life.」→ http://d.hatena.ne.jp/BMS12/

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