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群ようこ「今日は、これをしました」

料理本を読む

 また、この国にこんな料理もあったのかと驚いたのが、ロシアの水餃子だった。日本人は餃子が好きだし、中に包む餡も様々なバリエーションがある。ロシアのものは、中に入っているのはタマネギとにんにくとひき肉。それを餃子の皮で包んでゆでるのは、日本の水餃子と同じ。しかしその上にサワークリームをかけて食べるというのが、大きな違いである。餃子のたれをつけるか、中の餡にしっかりと味がついていて、そのまま食べるかの二択しかないと思っていたけれど、
「そうか、ロシアにはサワークリームという手があったのか」
と感心してしまった。ラー油や醤油や酢がなかったら、自分の手近にあるもので食べるしかないのだから、それはそうだろうなと納得した。試してみたいようなみたくないような、複雑な気持ちになった。他にもグルジア(現ジョージア)の小籠包そっくりなスープ入り餃子も紹介されていた。例の椿の葉っぱを食べたときに、通訳をしてくれた遼寧りょうねい省出身の女性が、よく自分で作る料理は「トマトと卵の炒め物」といっていたが、こちらも旧東ドイツの料理として掲載されていた。
 なかで私がいちばん興味をそそられたのは、旧東ドイツ風そぼろだった。タマネギをよく炒め、そこに豚ひき肉を投入。味つけは塩、こしょう、クミンで、ブイヨンを入れて煮詰めるという簡単なものだ。ここに醤油を入れてしまうと、日本のそぼろになってしまうので、クミンでやめておくのが、旧東ドイツの味なのだ。現地ではゆでたじゃがいもをはじめ、ゆでた野菜を付け合わせにして食べるという。これはいろいろと応用が利きそうだと見ていたら、「旧東ドイツのザ・貧乏メシ」とあった。懐が寂しいときの、とっておきのメニューだったのかもしれない。

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群ようこ

むれ・ようこ●1954年東京都生まれ。日本大学藝術学部卒業。広告会社などを経て、78年「本の雑誌社」入社。84年にエッセイ『午前零時の玄米パン』で作家としてデビューし、同年に専業作家となる。小説に『無印結婚物語』などの<無印>シリーズ、『散歩するネコ れんげ荘物語』『おたがいさま れんげ荘物語』などの<れんげ荘>シリーズ、『今日もお疲れさま パンとスープとネコ日和』などの<パンとスープとネコ日和>シリーズの他、『かもめ食堂』『また明日』、エッセイに『ゆるい生活』『欲と収納』『よれよれ肉体百科』『還暦着物日記』『この先には、何がある?』『じじばばのるつぼ』『きものが着たい』『たべる生活』『これで暮らす』『小福ときどき災難』、評伝に『贅沢貧乏のマリア』『妖精と妖怪のあいだ 評伝・平林たい子』など著書多数。

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