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群ようこ「今日は、これをしました」

料理本を読む

 この本で紹介されている国は、ラトビア、旧東ドイツ、ロシア、ハンガリー、リトアニア、ポーランド、スロヴァキア、ブルガリア、マケドニアなど、申し訳ないが国名を見ても、私はロシアのボルシチ以外は、特に思い浮かぶ料理がなかった。しかしこの本に掲載されている料理は、はじめて見たものがほとんどだったけれど、どれも作るのが簡単でおいしそうだった。庶民が食べているものなので、手軽に作れるものなのだろう。
 ただ牛乳、バターなどの乳製品が多く、それが苦手な私には、多少、アレンジが必要になりそうだが、彩りがきれいでつい作りたくなってくる。子どものときから見覚えがあり、今も作り続けている料理の色合いは、だいたいが茶系である。味噌も白味噌もあるが、多くは茶色、納豆も茶色、海苔は黒。他には野菜の緑色系、赤系はニンジン、トマト。黄色は卵くらいで、色合いには乏しい。
 それに比べてリトアニアなどで食べられている冷製スープは、ビーツを使っていて、そこにサワークリームが加えられ、本当にきれいなピンク色になっている。そして中に縦半分に切った、ゆで卵が入れてあって、ピンク、黄色、白の色合いがとても愛らしい。
 日本でスイーツ以外に、ピンク色の食べ物なんてあるだろうかと考えると、桜でんぶを思い出した。あれを見るときれいで胸が躍ったし、ハムやウインナーの色を見るとうきうきしたが、あれは食紅や発色剤が使われているので、自然のものではない。たらこも明太子も、着色料を使っていないものは、ピンク色がくすみがちである。幼い頃からこのようなきれいなピンク色の料理が食卓にのっていたら、色彩感覚も違ってくると思った。
 ただ食事の内容としては生野菜は少なく、付け合わせに使われているのは、ゆでたじゃがいも、ニンジン、グリーンピースが多い。ザワークラウトが保存のきく野菜として、使われているようだった。乳製品やじゃがいも、豆が多いのも、地元の人たちの体質に合っていて、手軽に入手できるから、現在まで食べ継がれているのだろう。
 本のなかでいちばん手が込んでいそうだったのが、ひき肉入りじゃがいも団子だった。じゃがいもの半量をゆでてマッシュポテトにしておく。残りの半量はすりおろして水気を絞って、ゆでたものに混ぜて練る。その中に炒めたひき肉などを入れて団子状に丸めてゆで、ベーコンと乳製品で作ったソースを、盛りつけた団子の上にかけるという料理だ。ここまで手をかけなくても、もっと手抜きができそうだが、この団子という形がポイントなのに違いない。

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群ようこ

むれ・ようこ●1954年東京都生まれ。日本大学藝術学部卒業。広告会社などを経て、78年「本の雑誌社」入社。84年にエッセイ『午前零時の玄米パン』で作家としてデビューし、同年に専業作家となる。小説に『無印結婚物語』などの<無印>シリーズ、『散歩するネコ れんげ荘物語』『おたがいさま れんげ荘物語』などの<れんげ荘>シリーズ、『今日もお疲れさま パンとスープとネコ日和』などの<パンとスープとネコ日和>シリーズの他、『かもめ食堂』『また明日』、エッセイに『ゆるい生活』『欲と収納』『よれよれ肉体百科』『還暦着物日記』『この先には、何がある?』『じじばばのるつぼ』『きものが着たい』『たべる生活』『これで暮らす』『小福ときどき災難』、評伝に『贅沢貧乏のマリア』『妖精と妖怪のあいだ 評伝・平林たい子』など著書多数。

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