2026.1.13
40歳でも、小さな子どもが2人いても、フィンランドでは外国人にも機会がある(第3回 後編)
100年の歴史をもつこの場所で、元新聞記者の堀内京子さんはフィンランド語の教室に通いはじめました。
そこで出会ったのは、いろいろな国からそれぞれの理由で、この街へ来ることになったクラスメイトたち。
生まれ育った国を出る決断の背景には、どのような物語があるのでしょうか。
「ほぼ全員が(フィンランドの)外国人」という教室で交差した、ひとりひとりのライフヒストリーを紹介するルポ連載です。
第3回 前編はこちら。
第3回 主婦歴10年、44歳でマッサージ店を起業した2児の母。きのこ採りに癒され、この地にしっかり根を張るタイ人のプイン(後編)
フィンランド語教室で出会ったタイ人のプインに励まされ、私はきのこ採りにはまった。
タイで“天職”のマッサージに出会ったプインはなぜフィンランドに来て、いま、森できのこを採って癒されているのか――。

「両親は、わたしがおかしくなったと思ったと思う。タイではマッサージというのは肉体労働で、知的労働だとは考えられていなかったから。でも『ごめんね。私は本当にこれがやりたいの』って言ったの」
その後、彼女はタイのマッサージのアカデミーに行き、北京のホテルでマッサージを経験し、大学の卒業式に出るためにタイに戻って、プーケットの5つ星ホテルで働き始めた。
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プインは2009年、29歳のとき、友人に誘われてフィンランドのホテルで働くことにした。「ヨーロッパのどこか。マイナス30度にもなる場所」――それが出発前に知っていたすべてだった。
「プーケットのホテルはいいホテルだったの。でも、お客さんから評判がいいのをマネジャーが信じてくれなくて、居心地はちょっと悪かった。さらに上の上司は『あなたはホテルのマネジメントを専攻してたし、英語もできるし営業成績もいいからマネジャーに昇進させられる』と言ってくれたけど、マネジャーになるのは自分には幸せな道じゃないと思った。そんなときに、友だちがフィンランドのホテルでマッサージ師として働かないか、って誘ってくれて。フィンランドは欧州のどこか、ぐらいしか知らなかった。タイでの面接では『フィンランドはマイナス30度にもになります。寒すぎて、もう2人辞めた』と言われたよ。でもフィンランドの人たちはそこに住んでいるんだし、友だちも一緒だから、いけるんじゃないかなと思った」
「29歳だったんだね……親は結婚しろとか言わなかったの」
「ううん、その時はお母さんも『いいじゃないの~ひとりで~~生きるのも~』って歌うみたいに言ってくれた。タイにはあんまり『こうするべきだ』っていう規範が少ないかもしれない。家族が海外に出ることも肯定的だしね」
けれども、プインがフィンランドに来た2010年ごろにはもう、フィンランドではタイから呼び寄せたブルーベリー摘みの労働者たちのひどい待遇が問題になっていた。2005年ごろから人手不足のブルーベリー摘みにタイからの季節労働者の受け入れが始まっていたが、2010年には借金を抱えてフィンランドに来て、逃げ場もなく働かされている状態だとして、テレビや新聞などで報道された。2013年には集団で刑事告発が起き、2022年にはフィンランドの最高裁が人身取引だったと認定。いまは制度が見直されている。
これは日本の外国人技能実習生制度の問題とよく似ている。労働者たちは、紹介費用などで多額の借金を抱えてフィンランドに来ていた。さらに、1日14時間週7日で働き、宿舎は劣悪で、来る前の話と違っていても、借金してやって来ているために実際には自由に辞めることもできなかった。
プインが勤め始めたマッサージの店も同様の問題があった。フィンランドの労働基準法では、週末や夜の割増賃金や、残業代が支払われることになっているが、実際には支払われていなかった。
店からは、「そういう契約に承諾したのはそっちだ」と言われ、とりつく島もない。ところがそのことが大手紙の新聞記事に載り、後に同僚は裁判で10000ユーロ(170万円)相当の未払い賃金が認められたほどだった。プインにも4000ユーロが支払われた。
「経営者は私たちを旅行に連れていってくれたりもして、いい人だなと思ってたの。だけど、実は賃金をごまかしてたんだよね! そこは大きなショッピングセンターにいくつも店を展開してたんだけど、結局ほとんど閉店しちゃった。仕事がなくなっちゃったから、もう自分で店をやるしかないと思ったの」
元同僚と2人でレンタルスペースを借りて店を開き、その後、1人で別のサロンを開いた。
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