2023.6.7
地下アイドルとの衝撃の〈ぬいぐるみ〉セックス?!──AV男優しみけんのセックスハウツーを頼った理由
AV男優しみけんのセックスハウツー
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僕は、どうもバックというものが得意ではなかった。自分の意識が手持ち無沙汰になってしまうからだ。目の前に相手の顔があればその相手が見ている世界に入りこむことができるが、目の前で相手がこちらを見ていないのであれば、僕の意識は簡単に身体から離れていってしまう。
膝立ちになって腰を振りながら、彼女の背中を見下ろしたり、自分の部屋を見回したりしていた。「彼女と自分の部屋でセックスをしているのだな」という当たり前のことを考えたりしていたら、男性器に力が入らなくなってきた。彼女の収縮する膣の圧力のおかげでギリギリ勃っていられる状態だった。このままじゃ駄目だ、集中しなきゃ、と思って、彼女の背中を触ったり、彼女の胸に手を伸ばしたりしたが、集中しなきゃ集中しなきゃと考えるたびに自分の身体から意識は離れ、視界は拡大するばかりだった。
ふと、ベッドのすぐ近くの床にシナモンが落ちていることに気がついた。彼女のお尻に腰を打ちつけながら、右肩を落としてベッドの下にあるシナモンを手に取った。僕が後ろでそんな動きをしているとは気づかずに、「あっ、あっ、あっ、あっ」と、彼女は下を向きながら喘いでいた。汗が滲みはじめてきた彼女のお尻の付け根から首の根本に向かって、シナモンの片耳の先っぽを縦方向にゆっくりと這わせた。
「あっ、あっ、あっ、あ゛、あ゛、あ゛、あ゛、あ゛」
背中を右に捩じらせたり、左に捩じらせたりしながら、途中から彼女がそれまでとは違う変な声を出した。それは僕が彼女の身体を触っているときよりも遥かに大きな反応だった。
その後も、シナモンの耳の先で彼女のお尻の付け根から首の根本までを、首の根本からお尻の付け根までをなぞるのを繰り返した。人間の身体の中にある主要な神経は縦方向に走っているから、身体をなぞるときは縦向きの方がよい。AV男優のしみけんの『SHIMIKEN’s BEST SEX 最高のセックス集中講義』という本に書かれていたことだ。
こうしたセックスのハウツーを受け入れることは、以前の自分には到底できることではなかったな、とシナモンの耳で彼女の背中をなぞりながら思い返していた。セックスはありのままの自分を愛し、愛される行為なのだから、セックスのときにハウツーなんかに頼ると、その分だけありのままの自分というものを毀損してしまうと思っていたからだ。そういった考えは、嘘みたいにどこかへ行ってしまった。年齢のせいだと思う。もう30歳になった。
身体の変化を感じ始めたのは28歳あたりからで、30歳になるとその傾向は顕著になってきた。
30歳になって、冬に布団を暖めるために布団乾燥機を買った。以前よりも、身体が寒さに耐えられなくなってきたからだ。
食事をするときは、野菜から食べるようになった。血糖値が上昇すると、すぐに頭が働かなくなって眠気が襲ってくるようになってきたからだ。
お酒を飲む前と飲んだ後には、ミラグレーン錠を飲むようになった。翌日にお酒が抜けなくなってきたからだ。
知識がつき、自分の身体や周囲の環境に気を配れるようになったと言えば聞こえはよいが、実際のところは、自分の身体が年齢とともに弱くなって、自分の心身が環境に左右されやすくなり、その分、気を遣わなければいけないことが増えているだけだ。
セックスのハウツーに頼るようになったのも、そうした考えの延長線上にある。自分の快のためには、相手も気持ちよくなった方がよい。それは利他とか隣人愛とかそういう話ではなくて、自分の心身が、他人を含めた環境に影響されやすくなった結果だ。それをエーリッヒ・フロムが『愛するということ』の中で書いていたように、「愛は技術だ」とか言ってしまえばかっこはよいが、それは身体が寒さに耐えられないから布団乾燥機を購入するのと、あまり変わらない気がする。
「ちょっと!やめてよ!」
シナモンの耳で6往復くらい背中をなぞったところで理性が戻ってきたのか、そう言いながら彼女が振り返ってきた。彼女の顔は、オレンジ色になっていた。お酒を飲んで赤くなったときとは違う、どこか、筋肉が緩み切っていて、僕と2人きりでセックスをしている時よりも何倍も恥ずかしそうな顔をしていた。
「ちょっと!やめてよ!」と言われてもシナモンの耳の先で背中をなぞるのをやめずに続けると、彼女はまた真下を向いて、「あ゛、あ゛、あ゛、あ゛」と唸るような声を出し続けた。それから何度も何度もシナモンの耳の先で彼女の背中をなぞった。お尻の付け根から首の根本まで。首の根本から、お尻の付け根まで。
「ねぇ、なんかシナモンに悪い気がする!」
数えられないくらいに体を右に左に捩らせたあと、こちらに顔を向けた彼女が急にお腹から声を出して、最後はシナモンを力強く取り上げられてしまった。それから彼女はヘッドボードのところにシナモンを置いた。シナモンが2人のことを正面から見つめる中、腰を彼女のお尻に何度も打ち付けて、射精した。
男性器を引き抜いてコンドームを外し、精子がこぼれないようにコンドームの口を結ぼうとしていると、仰向けになった彼女がコンドームの方を凝視してきた。彼女につられて僕もコンドームに目の焦点を合わせると、コンドームの表面に、斑模様に血の塊がいくつも付着していた。それに気づいた彼女がコンドームに手を伸ばして指先で触れると、その指を自分の鼻の方に持っていき、わざとらしくクンクンと臭いを嗅いだ。
「くさくなかった? 手、拭いてほしいんだけど」
ヘッドボードに置いてあったティッシュの箱からティッシュ数枚を取り出して、手渡してくれた。僕も自分の指先の臭いを嗅いだが、ゴムの臭いがするだけで、特に他の臭いはしなかった。だから別に拭かなくてもよかったが、彼女がティッシュを手渡してくれたから手を拭き、そのティッシュに口を縛ったコンドームをくるんでゴミ箱に放り投げた。
彼女の隣で仰向けになってスマホの画面を見ると、14時を過ぎていた。
「大阪行くのは、大丈夫?」
と聞くと、彼女がスマホでなにやら調べはじめ、
「14時55分の新幹線に乗れば、飲み会に最初から参加できそうだし大丈夫」
と言った。品川駅から14時55分の新幹線に乗るには、急いで家を出た方がよい時間帯だった。急いで服を着て、大久保通りを歩いて新大久保駅へ向かった。休日の大久保通りは歩道を歩くと人混みが凄すぎてとてもまともには歩けないから、2人で車道の路肩を歩いて向かった。
彼女のことを駅まで送って家に戻ると、睡眠時間が十分ではなかったからか、すぐにひどい眠気が襲ってきた。そのままベッドの上に倒れるように寝てしまった。
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