よみタイ

ママ友を失った理由は、300円の手作りアクセサリー

物販は、「売り上げ」ではなく「利益」を見よ

 販売していたママは知り合いだったので、うっかり聞いてしまった。
 私「1個300円で大丈夫なの?」
 彼女「大丈夫! これが50個売れたら、15,000円になるんだよ! 好きなことが仕事になってお金もらえるなんてうれしい!」
 待て、私はこれを買うとは一言も言っていない。
 と言いそうになったが、口をつぐんだ。
 そして、声に出さない(出せない)ツッコミが次から次へと頭に浮かんだ。

 ブースの前で足を止めた人全員が、これを見て買うと思うのか。
 ターゲットは誰なんだ? ママか? 子供か? 
 幼稚園・保育園に通う子供はこんな髪飾りをつけて登園できないのに気づかないのか? 
 子育てをたいしてしていない私だって園側の言いたいことはわかるぞ(例:危ないです、お昼寝の時に邪魔です…等々)。休日限定の髪飾りなのか?
 そして、売上で物販を考えるな。利益だ利益、利益。
 先に材料費とか持ち出してるだろ。それを忘れるな。
 今、この場でいただけるお金が全部自分のものだと考えるな。
 そして、この300円。どうやって値段設定した?
 よくよく回りを見渡すと、他のブースでも500円以内の商品が点在していた。
 これはこのイベントでの市場価格に合わせたということか。
 いや、だったらもっと材料費や作製時間がかからないような商品デザイン設計にしなければ、絶対に利益なんて出ないはずだ。

 私の口からこの世に存在してはいけない黒いものが溢れそうになったが、ぎりぎりのところでとめた。
 そして彼女は何かを我慢している私にこう続けた。

「こうやって定期的に販売して、『子供の習い事の足し』にしたいんだよね」
 私はこの利益を度外視した彼女の行動を、勝手に「趣味」と解釈していた。
 趣味なら何も問題ない。なぜなら趣味とは時間とお金をかけるものだ。物理的見返りはないことも多いだろう。
 しかし、彼女は、「子供の習い事の足しにしたい」と言った。
 アクセサリー売りを、家庭に新たなお金をもたらす行為だと考えていたわけだ。

 想像するにたやすい。
 ①デザインを考える時間1~2時間
 ②材料を買いに行く時間1~2時間
 ③作業時間が少なくとも1~2時間
 ④イベント販売5時間
 おそらく最低でも8時間。というか、もっとかかるだろう。

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新刊紹介

田村麻美

たむら・まみ●1984年埼玉県生まれ。立教大学経済学部卒業後、同大学院で経済学研究科博士課程前期課程修了。2015年に東京都足立区にTRYビジネスソリューションズ株式会社を設立し、税理士として活躍中。夫と娘の3人家族。自身の顔写真をカバーにしたデビュー作『ブスのマーケティング戦略』(文響社) は、「ブスが幸せな結婚&ビジネスでの成功」を叶えるための戦略を論じた画期的なエッセイ。刊行直後から話題となりロングセラーとなっている。「ブス」という現実に向き合い、あきらめず、粘り強く努力を続けた経験から、「がんばるブスたちが輝く日本をつくりたい」という骨太のライフワークを実践中。
『ブスのマーケティング戦略』は、集英社文庫から好評発売中。

田村麻美HP
http://tamuramami.com/

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