2024.6.14
宇宙ネタのテッパン「ブラックホール」の意外に知られてない本当の姿【ブラックホールの不思議/後編】
この連載では、独立行政法人理化学研究所、NASAの研究員として研究に携わった経験と、天文学分野で博士号を取得した知見を活かし、最新の宇宙トピックを「酒のつまみの話」になるくらい親しみやすく解説します。そして、宇宙と同じくらいお酒も愛する佐々木さんが、記事にあわせておすすめの一杯もピックアップ。
前編は映画「インターステラー」の中の超本格的な宇宙描写について紹介しました。後編はブラックホール研究の最先端について紹介します。
第15回「ブラックホール」のはなし/後編
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「ブラックホールっていったい何?」を徹底解説
光をも吸い込むというブラックホール、謎の天体だと思っていませんか?
ブラックホール研究は実は今、どんどん進んでいるんです。その理解をギュッと詰め込んだのが前編で紹介したインターステラーのCG映像。論文にもなるほど精巧につくられたCGを作るにも、ブラックホールへの理解が重要です。
今回はロマンに溢れたブラックホールがどこまで明らかになっているのかについて解説していきます。
ブラックホールって、そもそも凄く遠い存在だと思っている人も多いかもしれません。
そんなことはありません。実は、私たちはブラックホールの周りで、その重力に振り回されながら生活しているんです。地球が宇宙の中でどんな位置にいるかを理解すると、そんな姿が見えてきます。夜空に輝く天の川がそのヒントです。
みなさんは天の川を見たことがありますか?
私が宇宙に興味を持ったきっかけの一つに、学生時代のニュージーランド滞在があります。
南半球なので北斗七星ではなく南十字星が夜空の象徴になっている地域ですが、そこでホームステイ先のホストファーザーから星の説明や人工衛星の観測などを教えてもらい、興味を持ち始めました。ここで初めて天の川も見ました。
その時はうっすらとした姿でしたが、日本では比較的繁華街に近いところに住んでいることが多かったので、初めて見た天の川の帯に感動した記憶があります。
その時は私も、ブラックホールがこの天の川に関わっていると思っていませんでした。
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そもそも、天の川はなぜ帯状に星が密集しているように見えるのでしょうか。
それは、銀河の円盤を横から見ているからです。私たちの住んでいるこの地球(宇宙からこれを読んでいる人は今はいないはず)は、銀河系のフチにあります。
銀河は円盤状に広がった数億という星で形作られています。そしてその銀河は渦をまくように回転しています。この銀河の中心から約26,100光年外側に地球はあります。天の川は、銀河の円盤をよこから見ることで、帯状に星が並んでいるように見えているわけです。
日本からだと夏によりクリアに見えるのは、夏の夜空がちょうど銀河の星の多く集まっている中心方向を向いているからで、冬は逆向きなのでクリアには見えません。地球が宇宙の大きな構造の中にいることを、夜空を見るだけで実感できる天の川は素敵だなといつも思います。
ちなみに、太陽系を含むこの地球が存在している銀河のことを「天の川銀河」と呼ぶので、セットで覚えておくといいと思います。
ここで話をブラックホールに戻すと、わたしたちが住んでいる天の河銀河の中心に位置しているのが、ブラックホールです。その強い重力が光が抜け出すよりも大きいため、黒く見えています。
重力は天体の質量によって決まります。天の川銀河のブラックホールの重さは、なんと太陽の400万倍と言われています。この重さが作る強力な重力によって、その場所からの光が一切見えなくなり黒い穴(ブラックホール)のように見えているのです。
宇宙にはたくさんの銀河があることが確認されていて、それぞれの銀河の中心には太陽の100万倍を超える重さのブラックホールが存在していると考えられているのです。決して天の川銀河のブラックホールは珍しいという訳でもないですね。
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