2020.7.12
動物の70%以上は昆虫なんです! どうぶつ科学コミュニケーターが知ってほしい自然界のリアル
動物まみれのめまぐるしくも愉快な日常とは……!?
生き物の知られざる生態についても、自筆のイラストとともに分かりやすく解説します。
動物の専門家によるお仕事&科学エッセイです。
記念すべき第1回は、ぶっちーさんが考える「どうぶつ科学コミュニケーター」の役割についてのお話です。
そもそも「動物」って何か、考えたことがありますか……?
人生で初めて喋った言葉は「アリ」でした
はじめまして、どうぶつ科学コミュニケーターのぶっちーこと、大渕希郷です。
私は大学で微生物から爬虫類まで幅広く生物学を学んだのち、上野動物園の飼育展示スタッフ、日本科学未来館の科学コミュニケーター、京都大学野生動物研究センターの教員、日本モンキーセンターの学芸員を務めました。
現在は出身地の神戸で、妻子、そしてヘビ17頭、トカゲ22頭、カメ5頭、両生類11頭、サソリ多数、クワガタ多数、魚類……等々と暮らしています。
そして専門家として、執筆活動、講演や理科教室の開催、大学や専門学校での講義、移動動物園の実施などの仕事をしています。
「なぜ動物の専門家になろうと思ったのか」という質問をよく受けるのですが、これには深〜い理由が……
ありません。ないと思います。
自分でもなぜ動物が好きになったのかよくわからないのです。
親によると、初めて喋った言葉は「アリ」。
その後も幼児言葉のワンワンやニャーなど言わず、イヌはイヌ、ネコはネコと喋っていたそうです。
幼い頃から自宅周辺にいる生き物たちを観察するのが好きでした。
なぜ、この生き物は、この姿この生き方で生きていけたのか、そして何世代も命をつないでこれたのだろう? と考えると不思議でワクワクします。
例えるならば、みなさんがビル・ゲイツさんなど成功されている方の成功のヒミツが気になるようなものかもしれません。
生き物以外には漫画やアニメ、映画、ゲーム、いわゆるサブカルが好きです。
週刊少年ジャンプももちろん大好きで、『ジョジョの奇妙な冒険(4部・5部世代)』『北斗の拳』『ドラゴンボール』『封神演義』『すごいよ!!マサルさん』『HUNTER×HUNTER』……等々セリフを丸暗記している漫画もたくさんあります。
そんな集英社さんのWebサイトで、こうして連載ができるとは……!
絵を描くのも好きで、漫画家になるか、生物学の道を進むか、真剣に悩んだほどです。
今回、張り切ってイラストも描いてしまいました。
科学コミュニケーションとは?
さて、私は「どうぶつ科学コミュニケーター」です。
その名の通り「どうぶつ」と「科学コミュニケーション」を融合したいと思っています。
みなさんが耳慣れないであろう「科学コミュニケーション」とは、科学に関する対話のこと。
対話とは、意見や価値観が異なるときに行う、すり合わせのことを指します。
例えば原発問題など、さまざまな課題について、専門家に任せっきりにするのではなく、一般市民とともに答えや方針を模索するというものです。
科学コミュニケーターの役割は、一般市民(非専門家)に科学知識よりも科学的考え方・捉え方を共有し、「科学リテラシー」を持ってもらうこと。そのうえで、専門家と対話する場づくりをし、専門家と非専門家が様々な課題の解決の道を模索、合意形成するものです。
古くは専門家(知識ある側)が非専門家に知識を授けるというやり方(欠如モデル)が主流でしたが、実は非専門家から専門家が学ぶことも多いので、対話による科学コミュニケーション(対話モデル)が良いとされています。
科学コミュニケーションは、イギリスが先行しています。
1985年、「科学を公衆に理解してもらうために」という報告書がまとめられ、公衆の科学理解の促進(PUS)という考え方が大切と説かれています。
そして「PUSのために科学コミュニケーションを」という考え方は、世界各国に広まっていきました。