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二宮寿朗「1980年生まれ。戦い続けるアスリート」

田臥勇太は言い切る!「バスケと真摯に向き合い続け、成長していきたい」

シーズンも後半戦に突入。1/23日現在は東地区2位。優勝のために田臥の力はまだまだ必要だ。(撮影/熊谷貫)
シーズンも後半戦に突入。1/23日現在は東地区2位。優勝のために田臥の力はまだまだ必要だ。(撮影/熊谷貫)

大切な言葉「Never too late」とバスケへのラブ&リスペクトが田臥を成長させ続ける。

そして日本バスケット界に、大きな転機が訪れる。

国内のNBLとbjリーグが統合され、川淵三郎初代チェアマンのもと「Bリーグ」が誕生した。田臥は新しいBリーグの顔として期待を集めた。
バスケットボールをあまり知らない人でも田臥の名前は知っている。能代工業で負けなしのあの田臥、日本人初のNBAプレーヤーとなったあの田臥。Bリーグを広める手伝いがしたいと心から思えた。

「その立場って、誰しもに与えられるわけではないじゃないですか。やっぱり多くの人にバスケに興味を持ってもらいたいし、バスケを好きになってほしい。自分の役割をしっかりと受け止めて、向き合っていきたいなという気持ちはいつも持っています」

ブレックスは地域密着に力を入れてきた。学校訪問、バスケ教室、サイン会……ただ強いだけで「バスケットの街」にしたわけではない。地域と触れ合い、ファンサービスを大事にしてブレックスが大きな存在として定着していく。田臥もその一役を担ってきた。ブレックスに足を運んだファンは田臥に、チームに熱狂する。そして彼らはリピーターになる。ブレックスを好きになる、バスケを好きになる、田臥勇太を好きになる。

人は何故、田臥のバスケに惹かれるのか。
スピード感あふれるドリブル、意表をつくパス、美しいシュート。
だがそればかりではない。バスケを楽しんでいるという熱、勝ちたいという熱。
熱に年齢は関係ない。

観ている者をひと際熱くさせたシーンがあった。
初代Bリーグ王者を決める2016~17年シーズン、川崎ブレイブサンダースとのファイナル。第4クオーターの終盤、ブレックスはリードを6点差に広げていた。残り20秒を切って相手のジャンプシュートがリングにあたってルーズボールになると、田臥はこれを観客席に飛び込んでまで拾おうとしたのだ。コートが、観客席が揺れた。最後にチームを引き締め、勝利を決定づける魂のプレーだった。

田臥は昨年10月で38歳になった。
練習前はストレッチ、マッサージと準備を怠らない。足をなじませながらゆっくりと時間を掛けてバスケットシューズを履くのも田臥ならでは。コートに万全に立つためのルーティンはバスケに対するラブとリスペクトそのものだ。

年を重ねるたびにそのラブ&リスペクトは増している。
田臥は語る。

「どんどん好きになってますね。やるたびにバスケの奥深さ、面白さがわかってきて、やりたいことも増えてくるんです。こうしたい、ああしたいって。そんな中で俺はまだまだ下手だなって。もっとうまくなりたい、もっとうまくならなきゃって思うんです。

パスやシュートをしなくても自分がスペースを作ることで周りを動かすことだってできます。若いときなら自分のスピードを出すことしか考えなかったけど、今は周りを使って違う方法でもやれるな、と。ドリブルを1つつくのか、2つつくのか、足の角度はどうすればいいか、足のスタンスはどうか、そうやって突き詰めていこうとするとまだまだ奥深い世界がある。(ボールを奪う)スティールも相手の動きが見えるときもあれば、見えないときもあります。ならば1本でも多く見えるようにしたい」

バスケを語る彼の表情そのものが楽しそう。聞いているこちらも思わずつられて笑ってしまう。同じ1980年生まれのアスリート、中村憲剛は「まだまだうまくなりたい」と言った。その話を振ると、田臥は嬉しそうに同調した。

「まったく同じですね。もっとうまくなりたい。これからもますますバスケを好きになっていくと思うんです。うまくなっていけばまた見え方が変わってくる。それが楽しみ。バスケと真摯に向き合い続けて、成長していきたいという思いしかありません」

敬愛するバスケ漫画「SLAM DUNK」の一番大好きなキャラクターは同じポジションの宮城リョータから流川楓になった。
「いやいや、どのキャラクターも好きなんですよ」
そう前置したうえで、理由を語ってくれた。

「読む時期にもよって、感じ方も変わってきます。高校のときは宮城って同じポジションだし、見た目も何かいいしって好きだったと思うんです。でも時間が経ってみて読んで感じるのは、ああ流川かなって。単純に、流川が一番、バスケのこと好きかなって。流川は流川なんだなって」

田臥は田臥。
NBA挑戦に対する思いは変わっていない。チャンスを信じて成長するのみ。
Never Too Late。
38歳になっても、思いがあれば遅すぎることはない。

profile
たぶせ・ゆうた/1980年10月5日生まれ、神奈川県横浜市出身。B.LEAGUE栃木ブレックス所属のプロバスケットボール選手。3年連続で高校3冠、史上初の9冠を達成した能代工業から、ブリガムヤング大学ハワイ校を経て2002年トヨタ自動車アルバルクに入団。新人王を受賞。04年、NBAフェニックス・サンズと契約。日本人初のNBAプレーヤーに。08年、JBL(当時)のリンク栃木ブレックスに入団すると、09-10年シーズン初優勝を果たす。16-17年スタートしたB.LEAGUEでも初代王者に。
試合など最新情報はリンク栃木ブレックスの公式HPでチェック! 
https://www.tochigibrex.jp/

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二宮寿朗

にのみや・としお●スポーツライター。1972年、愛媛県生まれ。日本大学卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社し、格闘技、ラグビー、ボクシング、サッカーなどを担当。退社後、文藝春秋「Number」の編集者を経て独立。様々な現場取材で培った観察眼と対象に迫る確かな筆致には定評がある。著書に「松田直樹を忘れない」(三栄書房)、「サッカー日本代表勝つ準備」(実業之日本社、北條聡氏との共著)、「中村俊輔 サッカー覚書」(文藝春秋、共著)など。現在、スポーツ報知にて「週刊文蹴」(毎週金曜日)、Number WEBにて「サムライブル―の原材料」(不定期)を好評連載中。

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