2023.2.15
『我がマリノスに優るあらめや 横浜F・マリノス30年の物語』重版記念! 日産自動車サッカー部初代監督・安達二郎が50年見守り続けるクラブの航路
釜本邦茂の引退試合となった決勝でヤンマーに勝利し天皇杯初制覇!
1983年度の天皇杯決勝、加茂の古巣であるヤンマーとの一戦が忘れられない試合だという。釜本邦茂の引退試合としても注目された試合に2-0で勝利して、日産は初制覇を成し遂げる。金田喜稔、木村和司、水沼貴史、柱谷幸一らが奏でる攻撃サッカーによる栄冠は、日本サッカーに新しい風を吹かせることにもなった。
「あれほど嬉しい瞬間はなかったですよ。私が日産サッカー部という点をつくり、加茂さんが点をつなげて太い線を引いてくれました。選手をスカウトするときでも加茂さんは颯爽とフェアレディZで駆けつけて、〝俺もいつかは乗りたいな〞と気を引くのも上手でした。日産サッカー部の歴史をつくってくれたのは、やっぱり加茂さんなんです。そして会社自体もおおらかだったとは思いますね」
その後、日産自動車サッカー部は日本サッカーをけん引する立場になっていく。2年連続の3冠達成など黄金時代を迎え、Jリーグ開幕前年の1992年4月1日に誕生する横浜マリノスに引き継がれた。タネを蒔いて加茂につなげた安達の2年間があったからこそ、点が線となったのだ。
日産スタジアムにある貴賓席の一角が安達の指定席である。
Jリーグが開幕した1993年にニッサンモータースポーツインターナショナル(愛称ニスモ)の社長になってからも、ホームの試合だけはなるべく足を運んで試合を見るようにした。
貴賓席にいてもVIPという感覚はない。スタッフの一人として眺めるようにしている。
立ち上げの功労者だからといって、クラブ経営に口を挟んだこともない。
ただし、単に試合を見ているわけではない。ピッチ内も、ピッチ外も。どのようにチームをつくっているか、クラブ自体の現状はどうか、どこに課題があるのか、あらゆるものに目を向けている。
「2022年までクラブがやってこれたのは、ひとえに伝統の力。加茂さんが太い線を引いてくれて、マリノスになってからはそれが面になり大きく広がりました。マリノスの特色は何といっても、日本プロサッカーにおいて、その誕生と発展、成長と進化の先陣を走ってきた〝先進性、先駆者〞ということに尽きるような気がします。この気性や意欲は、文明開化に大きな役割を果たした港町・横浜の気性そのもの。だからこそ〝横浜にはマリノスがある〞んです。でも、残念ながらまだ立体にはなっていない。横浜のファンが心を一つにして応援できる空間、互いに寄り合い、語りあえるクラブ、日産時代からの輝かしい歴史を伝承し、子や孫に語り継げる場所……そういったものが、まだ、ここにはありません。先輩として一言申し上げるとしたら、やはりクラブの〝故郷〞〝母港〞というものがなくてはならないと思っています。そうなれば横浜F・マリノスは永遠の存在になっていくのではないでしょうか。歴代社長のことも私はよく知っています。これからにも、とても期待しているんです」
心臓に持病を抱えているためコロナ禍が始まった2020年、2021年の2シーズンは来場できなかった。日産自動車サッカー部創設50周年のメモリアルイヤーとなる2022年から、ようやく観戦を再開することができた。
背筋をピンと伸ばして、真っ直ぐに向ける視線。〝始まりの人〞は50年を過ぎた航路の行方もじっと見守っている――。
即重版決定! 『我がマリノスに優るあらめや 横浜F・マリノス30年の物語』
2022年、創立30周年を迎えた横浜F・マリノス。前身となる1972年の日産自動車サッカー部の設立からは、ちょうど50年になった。
Jリーグ創設以来、リーグ制覇5回、一度の降格もないトップクラブとして存在し続ける「伝統と革新」の理由を、選手、監督、コーチなどチームスタッフはもちろん、社長をはじめクラブスタッフまで30名を超える人物に徹底取材。「マリノスに関わる人たちの物語」を通じて描きだすノンフィクション。
Amazonなど各書店で絶賛発売中。重版分の全国書店着は2月末~3月頭頃を予定しています。デジタル版もあります!