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なぜ君は『コロナ時代の選挙漫遊記』を読まないのか——和田靜香さんが読む『コロナ時代の選挙漫遊記』

なぜ君は『コロナ時代の選挙漫遊記』を読まないのか——和田靜香さんが読む『コロナ時代の選挙漫遊記』

選挙取材歴20年以上となる、開高健ノンフィクション賞作家の畠山理仁さん。2020年3月の熊本県知事選挙から2021年8月の横浜市長選挙まで、新型コロナウイルス禍で開催された全国15の選挙を、感染対策を万全にしながら丹念に現地取材した選挙ルポエッセイが『コロナ時代の選挙漫遊』です。

その刊行記念として数回にわたりお届けしている連続書評特集。最終回は『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』が大きな話題を集めているライター和田静香さんの特別寄稿。今回の衆院選を香川1区で現地取材=選挙漫遊してきた和田さんだからこその書評です。

選挙に終わりはありません。次の選挙はすぐやってきます。

『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』と『コロナ時代の選挙漫遊記』はセットでご一読を!
『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』と『コロナ時代の選挙漫遊記』はセットでご一読を!

「ひとり民主主義応援団」を自称し、民主主義を背負っている畠山さんを尊敬する

衆議院議員選挙が終わって、私の周りでは多くの人がガックリ肩を落としている。自分たちが望んだ結果にならなかったと、絶望している。未来がないと、弱音を吐いている。

そんな仲間たちの肩をポンッと叩いて、私はこの本を差し出して言いたい。

「なぜ君は『コロナ時代の選挙漫遊記』を読まないのか?」←ちょいパクリ。

読んだら分かるはずだ。まだまだ、やれる余地があるって。落ち込んでるときじゃないって。自分はちゃんと祭に参加してなかったって。しっかり踊っていなかったって。

本の中で、著者の畠山さんは堂々言っている。

「選挙は民主主義のお祭りだ」

この言葉を読んで、私は本を抱きしめた。ギュウウウウウッ。ああ、そうです、そうですよねって言いながら。

今回の衆議院選、私は公示前日の10月18日に香川県・高松市に飛んで、投票日の数日後まで滞在した。8月末日に『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』という本を出したが、これは香川1区(高松市と小豆島など諸島部)を選挙区とする衆議院議員の小川淳也さんとの対話を基にして書いたもので、その対話そのものを、民主主義だと感じ、本にそう書いていた。でも、民主主義は机の上だけで繰り広げるものではないだろう。もっともっと広く大きく、民主主義はあるのではないか? そう思って、それを確かめに、民主主義を実践しに高松へ行ったのだ。

高松でのあれこれは、ほぼ毎日、「選挙日記」として発信した。そこは日に日に興奮が高まる、まさに祭りだった。私はほとんどの時間を小川事務所でのボランティア体験と小川さんの街頭演説会(街宣)を見ることに費やしたが、老若男女が集い、次第に全国からも人がやって来て、ワイワイとかまびすしい。熱気が渦巻いて街宣の場はさながら野外ライヴのようになった。

祭りの真っ最中には、たまたま畠山さんと偶然に出会った。自ら三脚を立て、街頭演説会の様子をビデオに撮る畠山さんは、どっからどう見ても楽しそうだった。祭りを楽しみながら取材する人、そうお見受けした。

しかし本を読んで知った。畠山さんは、ただ楽しんでるわけではない。「ひとり民主主義応援団」を自称し、「選挙の楽しさ、立候補の意味、参加することの大切さ」を伝えようと必死だ。投票率が低いと、それが伝えられなかったと自分を恥じるんだという。なんと! 民主主義を背負っている! すばらしい。尊敬する。

そんな畠山さんだから、私たちがいつも困るというか、どう言えばいいのか悩む「選挙へ行こう」という投票行動への誘導、その言葉も多彩に持っている。何せ民主主義を背負っているんだから、力強く言う。たとえば、

「投票に行かなかった人や、投票したいと思える人がいなかった有権者は、自分好みの候補者を擁立できなかった時点で『自分が負けている』ことを認識してほしい」

すごくない? すごい! 私は読んで、「うおおおお!」と声をあげた。

さらに言う。

「選挙に行かなかった人たちに、何度でも伝えたいことがある。選挙に行かないことは、自分から遠い存在の誰かを当選させる強烈な政治行動である」

この本には、そういった選挙にまつわる、目から鱗の提言が数々あるが、そうしたあれこれは全て畠山さんの地道な取材から生まれている。この本だけでも15の選挙を見て、聞いて、廻っていて、すごい取材力、さぞや大変だろうなぁと読みながら想像していた。なにせ高松1か所に行っただけで、気持ちは選挙ハイのように高まりながらも体はついて行けず、帰ってきてからもずっとクタクタのままだから。畠山さんは私よりはだいぶお若いが、それでも疲れるであろうと思っていたのだが、違った。

「選挙現場の熱に少しでも触れれば、元気がなかった人も元気が出る。心にも体にもいい影響が出る。これがその土地の有権者でもないのに様々な選挙を訪ね歩いて来た私の実感だ」

これまたすごい言葉だ。畠山さん、どれだけ選挙好きなんだ! 畠山さんは候補者本人はもちろん、その家族や事務所スタッフ、周囲の人、街頭演説会に集まる人と、あらゆる人に話を聞く。それを「楽しみ」なんだと言う。私としては、名古屋市長選挙に出ていた太田敏光さんという方、この方に会ってみたいなぁと読んでいて思った。それからスーパークレイジー君。都知事選に出た後、埼玉県・戸田市議会選挙に出た彼を畠山さんはじっくり追いかけていて、畠山さんは選挙が好きなだけじゃなくて、選挙に出る人のことが本当に大好きなんだなぁと分かった。

とはいえ、畠山さんはフリーランス。自分の興味で取材先を決めているため、ほとんどの場合、取材費を誰も出してくれない。それで毎回「旅費をどう抑えるか」が最大の悩みになるんだそう。深夜バスに乗ったり、GoToトラベルキャンペーンの安いホテルに泊まったり。そこ、実はいちばん頷きながら読んだ、なんて言ったら悪い? ごめんなさい。でも、大いに共感してしまった。

香川1区の選挙戦を取材した和田さん。地元スーパーでの小川淳也氏の街頭演説会も盛り上がっていた。(和田さん提供)
香川1区の選挙戦を取材した和田さん。地元スーパーでの小川淳也氏の街頭演説会も盛り上がっていた。(和田さん提供)
『コロナ時代の選挙漫遊記』連続書評
●第1回 “畠山理仁の漫遊は水戸黄門を超えた説”を唱えたい——プチ鹿島さんが読む『コロナ時代の選挙漫遊記』
●第2回 選挙はどろどろの人間ドラマ。それはまるで昼ドラだ。——時事YouTuberたかまつななさんが読む『コロナ時代の選挙漫遊記』

衆院選後だからもっと面白く読める『コロナ時代の選挙漫遊記』

書籍『コロナ時代の選挙漫遊記』の詳細はこちらから

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新刊紹介

和田靜香

相撲・音楽ライター。千葉県生まれ。最新著『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』(左右社)がヒット中! その他『世界のおすもうさん』、『コロナ禍の東京を駆ける――緊急事態宣言下の困窮者支援日記』(共に共著、岩波書店)、『東京ロック・バー物語』(シンコーミュージック)などの著書がある。猫とカステラときつねうどんが好き。
@wadashizuka

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