2019.12.4
姉は漫画家。妹は編集者。 出版界の有名姉妹がヒットを生み続ける理由
そうだ!! 私、編集者になりたかったんだ!
――同じ出版業界で活躍するお二人の原点となった少女時代については、奈緒子さんの作品『スラム団地』にも詳しく描かれていますね。
紀子 はい、破天荒で放任主義な両親のもとで、のびのびと育ちました。
奈緒子 でも、紀子とは5歳離れているから、当時の記憶の捉え方は微妙に違うし、私が高校を出て上京してからは、ゆっくり話せる機会もほとんどなかったよね。
紀子 そうだね。私は私で部活で忙しかったし。
奈緒子 一つ、覚えているのは、紀子が大学をそろそろ卒業するという頃に帰省して実家で会った時に、「就職はどうすると?」と聞いたでしょ。
紀子 あったね。私は児童文学科に通っていて、卒業制作に絵本を作ったというやりとりが。
奈緒子 そうそう。で、「へぇ、絵本を作ったとね。じゃ、描く人になりたいと?」って私が聞いたら、紀子が「いや、本をつくるのが好き」と答えて、「ふーん」と返して。次の瞬間、「そうだ!! 私、編集者になりたかったんだ!」と叫んだんだよ。
紀子 へ? 私が? そうだっけ!?
奈緒子 うん、言ってた。「だって、だって、ジャッキーが…!」とか興奮しながら(笑)。
紀子 すっかり忘れてた…。ということは、本に書いた“神の声”の主は姉ちゃんだったってこと?(笑)
奈緒子 それで進路を変更して、会社を何度か変えながらも編集者という職に近づいていったよね。リクルート九州支社に入って『じゃらん』の仕事を始めた頃に、私が東京から遊びに行ったの覚えてる?
紀子 覚えてる。温泉行ったね。
奈緒子 あの時、紀子は言ってた。「大好きな先輩たちがどんどん東京に行っちゃう。でも、私は福岡が好きだし、長崎の父母と近くにいるほうが安心だから、絶対に福岡を離れない」って。でも1年後には「東京に行くことにした。先輩たちが皆上京する理由が分かったから」って。何が分かったんだろうと不思議だったけど、見事に180度考えが変わったよね。
紀子 ほんとほんと、コロッと変わった。
奈緒子 強く拒否することって、それだけ意識しているってこと。だから、ちょっと視点が変わっただけで、強く惹かれたんでしょう。
紀子 たしかにそうかもしれない。上京を決意できたのは、姉ちゃんの存在も大きかったと思う。「しばらく一緒に住んでもいいよ」と言ってくれたし、先に東京行きを突破してくれていたことで、親もさほど心配しなかっただろうしね。
奈緒子 いきなり都心に近いオシャレな街で一人暮らし始めたからビックリした。普通は郊外から慎ましく始めるものなのに。
紀子 大先輩から「この街に住むと楽しいから」ってそそのかされたんだよ。おかげさまで家賃貧乏でした。でも、わりとすぐに同じ街に姉ちゃんも引っ越してきたでしょ。
奈緒子 私はちょうど初連載作品『レタスバーガープリーズ.OK,OK!』を連載していた頃で、「連載の原稿料という定期収入があるうちに、街中に住もう」と思ったんですよ。私は妹と違って出無精なので、生活圏内で流行を感じられる環境を求めて。
紀子 住む場所って、作品に多少なりとも影響していくものだもんね。