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【村井理子さん×ジェーン・スーさん『実母と義母』刊行記念特別対談 】 「親の顔」以外の父母のことがわからない~近くて遠い家族との過去、現在、未来

『兄の終い』『全員悪人』『家族』などで、家族関係のままならなさを描き続ける翻訳家でエッセイストの村井理子さん
10月6日に発売された最新刊『実母と義母』が話題を集めています。
癌で亡くなった実母と、今現在認知症が進行中の義母、「ふたりの母」に焦点を当てたエッセイです。

この刊行を記念して、著者の村井さんと、作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティとして幅広く活躍するジェーン・スーさんの対談が実現しました。
お二人はこれまで X(旧ツイッター)で交流がありましたが、実際に顔を合わせるのはこれが初めて。
共に70年代生まれで「書くこと」を生業とする者同士、近くて遠い複雑な家族への思いや、共通の趣味である格闘技に惹かれる理由などを語ってくださいました。

構成・文/菊池亜希子
撮影/馬場わかな
ヘアメイク(ジェーン・スーさん)/藤原リカ(Three PEACE)
取材協力/市川康久(agehasprings)

自己肯定感が高めなワケ

村井理子(以下、村井) はじめまして。お会いできるのを楽しみにしていました。

ジェーン・スー(以下、スー) 私も。こうしてお会いするのは初めてですが、御著書はもちろん、ずっとツイッターをフォローさせていただいてますし、「はじめまして」な感じがしないですね。

村井 リツイートし合ううちに、最近、お互い、格闘技好きということもわかったりして(笑)。

スー 新刊『実母と義母』も、とても面白かったです。読みながら、昭和ってつくづく女性が生きていくのが難しい時代だったんだと感じました。封建制度をそのまま引きずってるような空気が残っていて、男は怒鳴るし、威張ってる。女は何かを諦めさせられたり、家に押し込められたり。結婚したら家のことは全部やって当たり前で……。もちろん家によって違ったとは思うけど、女が200%頑張らないと家族が回らない、女はそういうものだ、という空気があったんじゃないかって。

村井 ウチも、母が馬車馬のように一人で働いてましたよ。夫婦でお店をやっていたのだけど、父は働かずにゴルフばかりしてた。なのに、家に帰ってくると威張ってましたね。

スー 私たちのひとつ上の世代は、まだそれが当たり前だったんでしょうね。いま、50代前後の私たち女性は、親世代のそういう姿も見てきたし、そう教育されてきた名残りもありつつ、一方で、それは不当な扱いだったんだということに気づいて、フツフツと怒りが湧いてもいる。複雑な世代だと思います。

村井 たしかに、母も義母も、結婚で自由を奪われてました。義母は結婚したことでそれまで大事にしてきた生き方を諦めましたし、そうすることが当然とも思っていた。だから私みたいなのが許せなくて、何としても私を変えようとしたんでしょうね。

スー 私の母は、私が24歳のときに亡くなったので、「母」という鎧を剥いだときどういう人だったのか、結局わからないままで、今となってはそれが残念で仕方ない。映画雑誌の編集者をしていて、気性もそこそこ激しかったし、自己主張もする人だったと記憶しています。若いころ、父が転がり込むように母のところにやってきて二人は結婚したらしいです。私、母のことは大好きだったけど、なぜ父と離婚しなかったんだろう、といまだに思う。さっさと別れて自分の人生を進めばよかったのにって。私は母親が選ばなかった人生を後追いでやっているのかもしれません。

村井 ウチは、両親が静岡の田舎町でジャズ喫茶を営んでいました。父は気難しくて激しい人。母はつかみどころがなくて、亡くなった今でもよくわからない人です。ウチは兄を中心に家が回っていて、両親は常に問題を起こす兄を何とかしようと右往左往してました。父はいつも兄を怒鳴り、そんな兄を母はどこまでも甘やかして。私は家族の中で、いつも少し遠くに置かれていたような気がします。逆に言えば、怒鳴られたことも、叩かれたこともない。放っておいてくれたし、いつも「理子は大丈夫。理子はかわいい」と言われて育ちました。4人家族でしたが、今は、私以外は皆、亡くなってしまいました。

スー 私は一人っ子です。私も幼いころ、両親からは「かわいい、かわいい」と言われ続けました。大きくなって、外に出てビックリ! 私、そうでもないじゃん、みたいな(笑)。でも、そんなふうに育ったので、自己肯定感はかなり高め。

村井 私も幼いころ、両親から自己肯定感を損なわれるようなことを言われた記憶が全くない。そのことだけはありがたかったな、と思います。

スー そこ、大人になると大きいですよね。

村井 たしかに大きい。私もスーさんと同じで、そもそもの自己肯定感がかなり高めだから、義母に何を言われても、何をされても、平気だったとは言わないけど、自分が崩れることはなかったんじゃないかと思っています。

村井理子さん
村井理子さん
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ジェーン・スー

1973年、東京生まれ東京育ちの日本人。作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティ。
TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」、ポッドキャスト番組「ジェーン・スーと堀井美香の『OVER THE SUN』」のパーソナリティとして活躍中。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』で第31回講談社エッセイ賞を受賞。著書に『生きるとか死ぬとか父親とか』『揉まれて、ゆるんで、癒されて 今夜もカネで解決だ』『これでもいいのだ』『私がオバさんになったよ』『ひとまず上出来』『きれいになりたい気がしてきた』『おつかれ、今日の私。』『闘いの庭 咲く女 彼女がそこにいる理由』、のほか『女に生まれてモヤってる!』『女らしさは誰のため?』(共著)など多数。

X:@janesu112

村井理子

1970年、静岡県生まれ。翻訳家、エッセイスト。主な著書に『兄の終い』『全員悪人』『いらねえけどありがとう いつも何かに追われ、誰かのためにへとへとの私たちが救われる技術』『ハリー、大きな幸せ』『家族』『はやく一人になりたい!』『村井さんちの生活』 『村井さんちのぎゅうぎゅう焼き』『ブッシュ妄言録』『更年期障害だと思ってたら重病だった話』『本を読んだら散歩に行こう』『ふたご母戦記』『ある翻訳家の取り憑かれた日常』『義父母の介護』『エヴリシング・ワークス・アウト 訳して、書いて、楽しんで』など。主な訳書に『「ダメ女」たちの人生を変えた奇跡の料理教室』『黄金州の殺人鬼』『メイドの手帖』『エデュケーション』『捕食者 全米を震撼させた、待ち伏せする連続殺人鬼』『消えた冒険家』『ラストコールの殺人鬼』『射精責任』など。

무라이 리코
1970년, 시즈오카현 출생. 번역가, 에세이스트. 주요 저서로 『오빠가 죽었다』 『낯선 여자가 매일 집에 온다』 『필요 없지만 고마워: 항상 무언가에 쫓기고, 누군가를 위해 지쳐있는 우리를 구원하는 기술』 『하리, 커다란 행복』 『가족』 『빨리 혼자가 되고 싶어!』 『무라이 씨 집의 생활』 『무라이 씨 집의 꽉꽉 채운 오븐구이』 『부시 망언록』 『갱년기 장애인 줄 알았는데 중병이었던 이야기』 『책 읽고 나서 산책 가자』 『쌍둥이 엄마 분투기』 『어느 번역가의 홀린 듯한 일상』 『시부모 간병』 등이 있다. 주요 번역서로는 『요리가 자연스러워지는 쿠킹 클래스』 『어둠 속으로 사라진 골든 스테이트 킬러』 『메이드의 수첩』 『배움의 발견』 『포식자: 전 미국을 경악하게 한, 잠복하는 연쇄 살인마』 『사라진 모험가』 『라스트 콜의 살인마』 『사정 책임』 등이 있다.

X:@Riko_Murai
ブログ:https://rikomurai.com/

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