2025.9.17
オープンダイアローグを経験して感じた「回復の力」――校正者・牟田都子さんが読む『相談するってむずかしい』
牟田都子さんのご自愛習慣:お風呂で本を読む
相談というのは話す人と聞く人、両方がいて成立する営みだ。だけど、身近に話せる人、聞いてくれる人がすぐには見つけられないという人もいるかもしれない。私はひとり暮らしが長かったので、そんなときの不安や孤立感をいまでもときどき思い出すし、いつまたそんな場面が訪れるかわからないとも思っている。だから、ひとりでも、いついかなるときでも、そこにいさえすれば無条件に安心できる場所があってほしい。私にとってのそれはお風呂だ。
初めて自分の意思で住む場所を探したとき、物件選びの決め手になったのは、部屋の広さに対してアンバランスなくらいゆったりと取られた浴室と、真っ白なバスタブだった。築40年超え、極端に小さなクローゼット、窓を閉めてもひっきりなしに聞こえてくる電車の音など、人によっては「無理」と思うだろう点もたくさんあったけれど、そのすべてを上回るくらいに浴室が魅力的で、即決した。あれからさらに何度かの引っ越しを重ねる中でも、清潔な浴室とたっぷり大きなバスタブという条件だけは譲らずにきた。
バスタイムは決めていなくて、朝はランニング(昨年足を痛めてからはウォーキング)後、夜は夕飯の支度を済ませたあと、家族が帰宅するまでの時間に入ることもあれば、寝る前に入ることもある。生理で腰やお腹が重いときは昼間でも入る。10年ほどのつきあいになる咳ぜんそくの症状が、眠れないくらいひどくなることがまれにあって、そういうときもとりあえずお湯に浸かる。お湯に浸かってさえいればそのうちよくなる、という信心めいた思いが、お風呂にはある。プラセボではないかといわれればそうかもしれない。でも、それで実際に苦痛がやわらぎ、復調するのだから、自分に限っては信じてもいいのではないかと思っている。
お風呂の中では、バスタブにみぞおちから下まで湯を張って浸かる、いわゆる半身浴のスタイルで本を読んでいる。朝は雑誌のことも多い。疲れているとき、体が弱っているときには、暗記するくらいくり返し読んだ本を本棚から抜き出してくる。堀井和子さんや有元葉子さんのエッセイは、もう20年以上読んでいるはずだ。何度食べてもおいしくて飽きない料理みたいに、「もういい」と思ったことがない。
お湯がぬるくなっても読み続け、すっかり冷めてしまってもやめられず、ついには一冊読み切ってしまう。たまにそんな本に出会えることがあるから、読むのはやめられない。
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発達障害による困りごとや、生きづらさを語り合う場を主宰する細川貂々と、心身の不調をきっかけに、目的を持たない対話の場を作った青山ゆみこ。
オープンダイアローグや当事者研究など、話す/聞く場の実践を通して、「相談する」ことの大切さに気づいたふたりがつづる、話して、聞いた日々のこと。
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