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UIの上に描かれる 「対話したのかもしれない」 という希望──赤野工作が読む『インディーゲーム中毒者の幸福な孤独』

幸福な瞬間の記録のようなもの

多分そういうゲーマーだからこそ、未知なるゲームとの出会いを語っては私のような人間に「そんなゲーム知らなかった……」と歯軋りさせるし。多分そういうゲーマーだからこそ、彼らに対し「対話できた」なんて言葉は嘘になるから使わない、「対話したのかもしれない」と言うのが精一杯なのだろうと、その正直さに頭が下がるほどには。

実は以前こんなことがあった。とあるゲームメディアの編集者とTwitter(現X)の話をしていたとき、「なんかソーシキ博士にウチのアカウントがブロックされてるんですよね……」と言われたのだ。一体何が理由なのかと恐る恐る本人に聞いてみたら、なんてことはない。「ゲームはちゃんと自分の手で探したいから」という素っ気ない理由だった。ようは、これから出会うかもしれない友達の評判は、良くも悪くも他人の口からは聞きたくなかったってことらしい。本書を読むまで、私はずっと「流石にカッコよすぎるだろ……、本心か?」と疑っていた。本書を読んだ今、私は「なんて正直に書かれた本なんだ」と笑ってしまっている。

私の目から見ても、そしておそらく皆さんの目から見ても、この本はまず間違いなく“人とゲームとの対話集”だろう。でも書いてる当人がなにせ正直で「ゲームと対話していたんだ」とは頑なに認めようとしない。だからまぁ、この書評の結論も“人から聞く知らない友達の話”なんてものにせざるをえなかった、というところだ。……もしかすると、この文章も“書評”とは呼べないのかもしれない。本書の言葉を借りれば、これも“私が個人的な本に与えて貰った幸福な瞬間の記録のようなもの”だと言えるが……、ちょっと恥ずかしいので、本書に感化されて困っているということにしておく。

『インディーゲーム中毒者の幸福な孤独』特集一覧
【試し読み1】 戦火のウクライナでリリースされた奇怪な経営シミュレーションゲーム
【試し読み2】 黄金の便器をゲット? トイレをシミュレーションする奇天烈な海外ゲームの世界
【試し読み3】 脳卒中の祖母を見舞う──絶望から自身を救うために作った個人的なゲーム

好評発売中

人生のどこかの瞬間と響き合う、個人的なゲームたち――
異能のアニメーション作家による唯一無二のエッセイ集。

戦火のウクライナ発の奇怪な経営シミュレーション、セラピストと絵文字だけで会話するゲーム、認知症患者となりその混乱や不安を体験……

「数多くの個人的なゲームたちと確かに交流したのだという幸福な錯覚は、自分と世界との距離を見つめ直そうとする私に流れる孤独な時間を、今も静かに支え続けてくれている」(本文より)

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新刊紹介

赤野工作

あかの・こうさく
ゲーマー。カクヨムに連載していた架空のゲームレビューの体裁をとる小説『ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム』が書籍化され、小説家デビュー。そのほかの共著に『ゲーマーが本気で薦めるインディーゲーム200選』などがある。

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