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【椎名誠さん×群ようこさん『続々失踪願望。 病み上がり乾杯編』『ちゃぶ台ぐるぐる』刊行記念対談/前編】

去る11月6日、椎名誠さんの『続々 失踪願望。 病み上がり乾杯編』と、群ようこさんの『ちゃぶ台ぐるぐる』が、集英社より同日発売されました。かつて「本の雑誌」編集部で共に若き日を過ごし、とても縁の深いおふたりです。この絶好のタイミングを逃すまじと、新宿三丁目の名店「池林房(ちりんぼう)」にて対談をしていただきました。

写真/松田嵩範
構成・文/竹田聡一郎
編集協力/池林房
http://www.chirinbou.com/
椎名さんお馴染みの「池林房」にて。お互いの書籍を手に語り合うおふたり。
椎名さんお馴染みの「池林房」にて。お互いの書籍を手に語り合うおふたり。

無敵だったイメージの椎名さんも歳をとるんだな

椎名誠(以下、椎名) 新刊、読みました。面白かったです。まず表紙カバーがなごやかでいいですね。

群ようこ(以下、群) ありがとうございます。椎名さんのカバーも、お写真が素敵じゃないですか。

椎名 「どこへ逃げようかなあ」なんて考えてる、さびしい老人だけどね。

 そうですか(笑)。

椎名 群さんのカバーイラストを描いた人(佐々木一澄さん)はいつも組んでいる人なの?

 今回、初めてです。

椎名 そうなんだ。なんか馴染んでいる気がしたよ。タイトルも群さんらしくていいよ。

 ありがとうございます。私も椎名さんの一連の(「失踪願望。」)シリーズを読ませていただきました。私は若い頃のバリバリの椎名さんしか存じ上げていなかったので、驚きました。ほとんど日本にいることもなくて、すべてにおいて無敵だったイメージの椎名さんも歳をとるんだな、と。それと同時にいちさん(妻・渡辺一枝)の素晴らしさを再確認する本でした。

椎名 一枝さんのことは、これまであんまり書いてこなかったからね。俺はだいたいバガボンドみたいに動き回っているけれど、いつも野郎どもと一緒に遊び回っているだけ。でも一枝さんはひとりでどこでも行っちゃう。

 ああー、そうですね。

椎名 しかも馬に乗って半年とか1年くらい帰ってこない。行方不明とほぼ同じ。一度、チベットで半年くらいどこにいるか分からなくて、今と違って都市部にいても電話なんてロクにできない時代に、ペンクラブの集まりかなんかで「チベットで馬に乗っかって1人でパカパカ飛ばしている日本人女性がいるらしい」みたいな話が聞こえてきたことがあった。「それはうちのおっかあかもしれません。ちょっと詳しく聞かせてください」と尋ねたんだけど、その人も「いや私も人から聞いただけですから」と詳細は知らなかった。でもその時は「ああ、生きているんだな」と妙に安心したなあ。

 すごいですねえ。

椎名 いま俺は「失踪願望。」だなんだと騒いでいるけれど、彼女は昔からもうじゃんじゃん失踪してるわけですよ。

 一枝さんも常に動いていたんですね。

椎名 今日、家を出る時「群さんに会うよ」と言ったらよろしくと言ってました。

 一枝さんにも本当にいろいろと、よくしていただきました。

椎名誠さん
椎名誠さん
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新刊紹介

椎名誠

しいな・まこと●1944年東京都生まれ、千葉県育ち。1979年『さらば国分寺書店のオババ』刊行。89年『犬の系譜』で第10回吉川英治文学新人賞、90年『アド・バード』で第11回日本SF大賞を受賞。『岳物語』『大きな約束』『家族のあしあと』等の私小説、『武装島田倉庫』『水域』等のSF小説、『わしらは怪しい探険隊』を原点とする釣りキャンプ焚き火エッセイ、『出てこい海のオバケたち』等の写真エッセイまで著書多数。ジャンル無用の執筆生活を続けている。近刊は『哀愁の町に何が降るというのだ。』『真夜中に吠えたくなって』『中学生あらくれ日記』。

群ようこ

むれ・ようこ●1954年東京都生まれ。日本大学藝術学部卒業。広告会社などを経て、78年「本の雑誌社」入社。84年にエッセイ『午前零時の玄米パン』で作家としてデビューし、同年に専業作家となる。小説に『無印結婚物語』などの<無印>シリーズ、『今日もお疲れさま パンとスープとネコ日和』などの<パンとスープとネコ日和>シリーズの他、『かもめ食堂』『捨てたい人捨てたくない人』、エッセイに『還暦着物日記』『スマホになじんでおりません』『老いてお茶を習う』『六十路通過道中』『ちゃぶ台ぐるぐる』『かえる生活』、評伝に『贅沢貧乏のマリア』』など著書多数。

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